戸惑いの昼休み、鹿嶋あやめ-2
「三課の桜木くん、捕まえちゃった」
そう笑いながらいい、カスミ先輩は軽やかに席へと着く。
自ら持ってきたカツ煮定食を前に先輩はご満悦だ。
「うどん、ここでいい?」
「さ、桜木先輩、す、すみません……!」
きつねうどんが目の前に置かれ、桜木先輩が目の前に座る。
「前、いいよね?」
爽やかに笑う桜木先輩。私は首をたてに降るのが精一杯で、顔に血液が集まってくるのに気がつかなかった。
「こんなののどこがいいんだか」
どん、と斜め前に衝撃音と共に生姜焼き定食、大盛。
そろりと視線をあげれば、サアッと血の気が引いた。
上のフロアの主、営業三課課長、出水課長が……。
「やだ、出水、脅かさないであげてよ。顔が怖いわぁ」
「……斎川、うちの桜木をコキ使っておいてよく言うな」
「桜木くんはジェントルマンだから、自ら持ってきてくれたのよ?」
得意気な顔でカスミ先輩が笑う。
私はあたふたと「違うんです、私が席をとろうと離れたから……!」そう言葉にするが出水課長の声にかき消されてしまう。
「男なら誰でもいいんだもんな」
挑発的に笑って、出水課長は箸を手にした。
味噌汁を一口。皿に山のように盛られた豚肉は照り輝いていて黄金色。それを一枚口に運ぶ。
じゅわっと油とタレの滴る肉。白飯、また肉。
ガツガツと食べる、そんな姿を前にして。
苛立ったのはカスミ先輩だった。