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愛しさと渇望
【大人 恋愛小説】

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戸惑いの昼休み、鹿嶋あやめ-3

「……はぁ?男日照りが何解ったような口きいてんの?」

方やカスミ先輩は、半熟卵が目に眩しいカツ煮に箸を突き刺している。
白身と黄身がトロトロで、厚めのカツにほどよく絡まっているのが見てとれる。
味の染み込んだ衣と長葱。朱色の箸が一口サイズに割っていく。

「……日照り!?男に媚びうるようなアンタと比べないでもらえる!?」

出水課長が箸を叩きつけ声を荒げた。
私が箸も取らずに青ざめているのに対し、目の前の桜木先輩は悠々とトマトスパゲッティを食し続けている。

「媚びてないわよ!足蹴にしてるようなアンタみたいな鬼課長よりはマシよ!」

バン、とカスミ先輩もいつもと真逆の素晴らしく怖い表情で対峙している。箸を叩きつけ、腰をあげた。

「媚売って女々しく生きてる万年社員止まりとは違うんだよ!」

もう話はあってはならない方向に向かっていて。
涙目になる私は桜木先輩に助けを求めようと声をかけた。

「さ、桜木先輩……!」
「ん?ああ、放っとけば?きつねうどんが伸びちゃうよ」

そう涼しい顔で言葉を返す。
……優しくない、全然!
胸をときめかせていた数分前の自分に後悔し、私は桜木先輩に詰め寄る……が、女二人の言い争いもヒートアップしていた。

「何よこの………暴力女!」
「な、………この、猫被り!」
「万年処女!」
「ヤリマン!」

声を荒げ、立ち上がったまま掴み合いでも始めそうな二人に、私は酷く狼狽え青ざめる。

「さ、桜木先輩、なんとかしないと……」
「駄目だよ。こうなったらいつものこと。本人たちが飽きるまで続くって知ってるでしょ?」

そう呆れた様子で言う。
確かにそう。何回か目撃してきた。何でもそつなくこなすカスミ先輩の欠点。
営業三課課長の出水さんとは犬猿の仲、だということ。
顔を会わせて話すだけが、いつも些細なことから喧嘩になる。
だから会わせてはいけない、百点満点のカスミ先輩が一気に横暴な般若になっちゃうから……!!!

誰か助けて!そう思って視線を巡らせるが、誰しも関わりたくないと目をそらした。
そりゃ、そうかもしれない。
だってその場にいる桜木先輩だって、そ知らぬ顔してトマトスパゲッティを食べているんだから。

私は冷めていくきつねうどんを眺めながら、ただただ深い溜め息を吐くばかりだった。






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