THANK YOU!!-1
桜のつぼみが膨らみ始める頃・・3月。
もうすぐ、一つの場所から旅立つ。
「で?何でチョコチップクッキーなわけ?」
「しょうがないじゃん・・頼まれたんだし」
「バレンタイン忘れてチョコあげなかったもんね、瑞稀」
「・・うっ・・・」
瑞稀は言葉につまりながら、クッキーの生地をこねていた。
こうなった経緯が全て秋乃に言われたこと全てだったので、何にも言い返せなかった。
ここは、瑞稀の家のキッチン。
そして今日は3月14日日曜日。世間で言う、“バレンタインのお返し寄越せや”なホワイトデー。
そのお菓子を作っているのが、“お菓子業界の戦略に乗らなかった”もとい“バレンタインを忘れていた”瑞稀。
そして、お菓子づくりが出来ない瑞稀を手助けするためにお邪魔した秋乃。
この二人が今作っているのはチョコチップクッキーと呼ばれるチョコチップが混ざって・・散りばめられているクッキー。
何故こんな凝ったモノなのかというと、バレンタインデーにポッキーを渡してきた拓斗からの有無を言わさぬ頼みだから。
《「お前からチョコもらってないし」》
「大体ポッキーあげたじゃん!何で普通のクッキーじゃダメなんだよ!」
「・・・」
「それだったらまだ私でもなんとかなったのに、いや、なったかな・・。でもチョコチップを頼むってどうよ!」
「・・・・でもさ、そんな風に文句タラタラでもちゃんと応えてあげんだね」
「・・は・・?」
凄まじい勢いで叩きつけるようにこねていたクッキー生地から思わず手を離した瑞稀は隣でチョコチップを用意していた秋乃へ振り返った。