THANK YOU!!-8
「あれ・・先生に助け出されたと思ってるだろ」
「・・・え・・」
違うの?
あの子に、成すすべも無かった。ただ、大人しく無様に泣いていたんじゃないの?
そう言ってしまいそうだったが、拓斗のますます厳しくなる表情に怯え、言葉にすることは叶わなかった。
「確かに、助けたのは俺達だ。でも・・アイツは窓を蹴破って脱出しようとした。事実、窓は割れて逃げ出せたはずだったけど」
「・・・え・・・うそ・・」
窓を蹴破った・・?
あの窓には逃げられないように木の板を強くはめ込んでいたというのに・・?
思いがけない瑞稀の取った行動にただ驚く菜美。
そんな思い切ったことをするとは思ってなかったから。
「でも、そのせいでいくつもの深いキズを左足に負った。俺達が中に入ったとき、アイツは血だまりの中で倒れていた。出血多量のショックで、気を失ってた。」
「・・・・血・・だまり・・」
その姿を想像したら、気持ちが悪くなった。
胸がえぐられるかのような・・内蔵を掻き回されているかのような気持ち悪さ。
「それでも、アイツは泣いてなんかなかった。目が覚めてからも、俺達に気遣って笑顔を見せてた。泣くことも、閉じ込められたことに対しても何も言わなかった。」
「・・・・・」
「勿論、誰かを責めることもしなかった。ただ、心配をかけないように・・笑ってた。」
「・・・」
「・・・俺は、悪いけどお前のことを許せない。俺のことじゃなくて、アイツのことで。
たとえアイツが許しても・・だ」
安心しきった手が、再び小刻みに震え始めた。
許されない。なら・・もう、気持ちだけでも伝えようと奮い立たせた。