THANK YOU!!-6
「ホワイトデーにチョコって・・バカじゃないの?バレンタインデー、拓斗君待ってたのに!」
「だ、だから・・謝って・・今日約束して」
「私なんか!私なんか受け取ってすらもらえなかったのに!!」
「・・・え?」
もはや瑞稀の言葉を聞いていない菜美は、声が出ない瑞稀にバレンタインデーに何があったのか話した。
******
「・・・出来た」
バレンタインデー。授業が終わった菜美は家に戻って速攻でトリュフを作っていた。
ラッピングまで綺麗にできると、もうそれはお店に出されてもおかしくない出来栄え。
これなら、大好きな人に受け取ってもらえる。
だが、気持ちが伝わることはもう無いだろう。自分は、その人を傷付けてしまった。
怒りと絶望に身を任せてカッターを手にして、その人の手を切り付けてしまった。
「・・・それでも・・お詫びでもいい。受け取ってくれれば・・」
紫の袋に入ったトリュフを抱き締め、自分のこのあとを想像した。
最初は困ったように。でも最後は照れ笑いで受け取ってくれる・・拓斗を。
そして、自分の気持ちを告げられるなら・・。
菜美は期待と緊張で胸をふくらませながら学校へ向かった。
学校に戻ってきた菜美は迷うことなく図書室へ向かう。
あらかじめ、拓斗に“瑞稀が図書室に居る”という事を伝え、自分からでは無い誘いをしていた。(つまり、拓斗が自分から進んで来てくれるように)
そして、図書室への最後の階段を登ったとき。
目の前に愛しの人が図書室に入るところだった。
「拓斗君!」
思わず、大声で呼び、足を走らせる。
呼ばれた拓斗は何事かと思い、振り向いた。手には、赤い箱を持って。