ROB-9
リビングの椅子に腰掛けさせられる。俺とヤマダは,並んで座っている。いれたてのコーヒーにいち早く手をつけたのは,ヤマダの方だった。俺も彼に続いて,カップを口に運ぶ。いつもながら,美味だ。この女,コーヒーショップのオーナーをやっても,成功するに違いない。
目の前,凄まじい早さでパソコンのキーを打っているこの女。この女こそがROBの秘書,瀬谷だ。スーツを身にまとい,長い黒髪を一つに結んでいる。この装いは,俺がはじめてここに来た当時から変わっていない。それとも,単に忘れているだけなのかもしれない。記憶なんて実際,頼りにならないから。
ひと段落着いたのか,瀬谷は,黒縁の眼鏡の中心を持ち上げながら,俺らに視線を向けた。
自分が,パソコンの画面になったような心地がした。
「ご苦労様。どうやら,成功したようね。今さっき届いたんだけどボスがメールで,今回の報酬はかなりいい額になりそうだ,との仰っているわ。」
どこで俺とヤマダの働きの結果を知ったのか。
何にせよ報酬が高いとは,いいしらせだ。
いったい,どのくらいの額になるのだろう。
ヤマダに相槌を任せ,俺は再びコーヒーを喉に流し込む。