THANK YOU!!-3
「アンタは何で吹奏楽の所しか見ないの。他の部活も見たら?」
「だって、吹奏楽部しか入る気が無いし。これなら、附属の中学の方が環境が良いと思う。だから、行かないよココには。」
そう言い切ると、瑞稀は立ち上がった。叔父の部屋で、ゲームの続きをしようと思っていた瑞稀の耳に、祖母の言葉が聞こえた。
「これは、アンタの母親が行きたかった学校なのよ」
「・・・・は?」
突然出た言葉に、瑞稀は思わず反応してしまった。
祖母は、瑞稀の顔を見て言った。
「アンタの母親が、行きたくて受験して、落ちたの。」
「・・・・だから、受験しろと?」
「そうよ。高校受験しなくて済むし、あの子が見れなかった景色を見せてあげられるの。だから受験して欲しいって頼んでいるの」
「・・・じゃあ、お兄ちゃんに行って貰えば良かったじゃん」
返す言葉に困った瑞稀は、なんとか考えて一つの言葉を出した。
しかし、それもすぐ返される。
「この学校は女子校よ。カズに行かせられる訳ないじゃない」
「・・・・・」
カズ。というのは叔父の名前。和哉がちゃんとした名前だが。
その答えを聞いた瞬間、全てを諦めた瑞稀は再びため息をついた。
母親の事が出てきたとなれば、何も言えなかった。
「・・じゃあ、一つ条件出していい?」
「・・何?」
受験してくれるととも取れる言葉を出した瑞稀を見て、祖母は無表情から安堵の表情になる。今度は瑞稀は無表情になる番だった。
「受験するけど、一日の一回だけ。勉強もするけど、そこで受からなかったら問答無用で附属の中学行く。・・それで良い?」
「・・分かったわ。」
瑞稀の申し出に躊躇ったが、これ以上譲る気はない瑞稀を見て了承した。
それを確認した瑞稀はダイニングを出た。
複雑な表情をしながら。