『桃色の旅』〜変態映画館〜-10
『それでは前半部分の上映を終了いたします』
ふっ、と頭の中に流れていた映像が消え、背後のドアが開いて一筋の光が流れ込んできた。現実と虚構が混じる。頭がお酒に酔ったみたいにくらくらする。
この部屋まで案内してくれた女性が、いつのまにか隣に立って微笑んでいた。小さなタオルを差し出され、自分の頬が涙で濡れていることに気がついた。柔らかなタオルを頬に当てると、とってもいい香りがした。小さなコップに入った飲み物を渡され、一息に飲み干す。優しい甘さが、とげとげしていた気持ちを洗い流していく。
「いかがでしたか?前半部分はお客様の記憶を元にした『思い出』の映像です。これからご覧いただく後半部分は、お客様の願望を映像化したものとなります。前半と同じく、体の力を抜いてリラックスした状態でお楽しみくださいませ」
再び背後でドアが閉じられ、室内が暗闇に包まれた。前半のときと同じようにシートにゆったりと背中を預ける。ヘッドレストが頭の形にぴったりとフィットする。今度は意識しなくても自然に目を閉じていた。小さな音楽が聞こえ始め、ぼんやりと何かが頭の中に浮かび始める。