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私の夏
【青春 恋愛小説】

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星空-2

「オレとオヤジな、オレの進路のことで揉めてんねん」

「えっ?進路」

 そうかあ、ナツさんてもう就職を考える歳なのね。あたしもこの春に入学したばかりだけど、就職のことなんて直ぐなのよね。

「で、どんな進路を考えて揉めたの?」

「オレは進学を止めてオヤジの豆腐屋を継ぐって言うてんねんけど、オヤジは『先の見えへん商売なんか継がんと大学に行け』って言うんや」

 んっ?今、こいつ何て言った?大学?あたしはナツさんの言葉に天地がひっくり返った。

「えっ?え―――――っ!進学?え―――――っ!大学って?え―――――っ!そしたらナツさんて高校生なん――!え―――――っ!」

「ピンポーン!ホンマは旅行中は舐められんように社会人で通そうとしたんやけどな」

「え―――っ!それに一体何の意味があるの?」

 男の子が解らない…

「他の3人も高校生やで。初めての旅行やから気合いれててんけどな。オレら結構大人に見えたんちゃう?」

「それであんなしゃべり方をしてたのね」

 こいつらバカだ!

「オレは特に童顔みたいやからサングラス掛けたら丁度エエってみんなも言うてたわ」

 た、確かに可愛いらし顔立ちしてる。で、でも高校生だったなんて…。う〜〜〜、ダメだ、ショックが大きすぎる…

「せっかく話したから最後まで聞いてくれる?」

「ど、どうぞ…」

「ウチは2代続いた商店街の豆腐屋なんやけど今の時代は難しいみたいなんや。ほら、あちこちに大型スーパーとか出来てきたやろ?」

「そう言われれば、今の商店街って寂しいよね。あたしの家の近所もシャッター街だよ」

「しゃーから、オレが手伝ってオヤジと2人で盛り返そうと思てたんやけど、『お前は好きな道へ進め』て一方的に言うてオレの気持ちを解ろうとせえへんねや」

「ナツさん、いや、ナツくんでいいよね。ナツくんもお父さんもステキね。でもそれだけで殴られたの?」

「オレの下に弟と妹が居るんや。それで『オレがこのまま進学したら家計に響くやろ』て言うたことが直接の原因や。『親を舐めるな!みんな進学させたるわい』てどつかれてしもてん」

「か、過激なお父さんね…」

 なんか凄いパワーを感じるわ。

「過激やろ?ホンでしばらくはサングラスを掛けたままなんや。高かってんでこれ」

「でもいいお父さんじゃない。お父さんがそこまで言うんやったら、ナツくんて本当は豆腐屋さん以外に好きな道があるんとちゃう?」

「うっ…」

「有るんでしょ。あたしが相談に乗ってあげるから言いなさい」

 話の成り行きでこうなったけど、なんであたしが誘われた相手の進路相談なんか聞いてるんだろ?

 あたしの好きなタイプはあたしの心配事を相談できる頼れる大人の人なのに…

「実は子供の頃から絵本やおとぎ話が好きやってん。ホンで本屋さんかそんな本を扱う出版会社に勤めるのが夢やったんや」

 うっ、なんてロマンチックな夢なの。可愛いじゃないの。

「それはステキな夢じゃないの。その夢を諦めて後悔しないの?」

「う〜ん、ホンマのところはよう解らへんねん。オヤジを手伝うのが正しいのかどうかも」

「そうやね〜。今の社会情勢で豆腐屋さんが未来永劫安泰とは考えられへんしね。多分お父さんの方が肌でそれを感じてると思うな」

「ナッちゃんてハッキリ言うなあ。そんなに未来ないかな?」

「そんなことは解らへんよ。世界的に商店街の豆腐が大人気になるかもしれへんし」

「どっちなん?」

「まあ、あたしが思うにナツくんのお父さんてまだ若いんでしょ。まだまだお父さんも頑張れると思うから、ナツくんもどうしても諦めなければならない時が来るまでは夢を追いかけるべきだと思うよ」

「そうかなあ…」

「そうだよ、全く利害の無い第三者のあたしが言ってるんだから公正な意見だと思うよ」

「利害が無いって?そんな冷たい事言って〜」

「何が?」

「何年かしたらオレとナッちゃん結婚してるかもしれへんのに」

「へっ?無い無い無い、あたしは年下はダメなの」

 全く有りえないわ。

「え―――!そんなアッサリ言わんといてや、オレ頑張って年上になるから」

「何バカなこと言ってんのよ。そうやねえ、ナツくんが立派な社会人になって頼れるようになったら考えてもええよ」

「わかった。早く社会人になるため大学諦めてやっぱり豆腐屋継ぐわ!」

「アホッ!夢の無い人なんか余計に相手にせえへんわ」

「アホて、さっきまで敬語使ってくれてたのに、エライ落差や」

「敬語を使って欲しかったら、あたしが尊敬できるようにちゃんと努力しなさいね」

「う〜〜〜」

「それとさっき煙草吸ってたでしょ。もう吸ったらアカンよ、20歳まで待ちなさいね」

「う〜〜〜」

「解ったん?」

「は、はい…」

「じゃあ、星の続きでも見ましょ♪ナツくんの夢が叶うように星の王子さまを探してお願いしましょうね」

「はい〜」

 はいだって、う〜、可愛い♪でも悪いけどキミは恋愛対象じゃないよ!

「星って綺麗やね〜」

「はい〜」

 う〜、可愛い♪


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