第10話 二人の始発-2
「え・・ええ・・・少しだけなら、まだ時間がありますから・・・・・・」
陽一は、仕方なく思いながらも、その場のベッドに腰を下ろした。
「ねえ・・・私は陽一さんの事を、からかって誘ってるみたいだけど・・・本気で抱かれて良いと思ってたのよ。それは・・・今だけじゃ無く・・・初めて会った時から・・・・・・」
「えっ!?」
玲子の言葉は、陽一の目を丸くさせるほど衝撃的だった。
度々、身体の関係を匂わせる事を話していたが、すでに初めからその対象だった事に、驚きを隠せずにはいられなかった。
「ごめんなさい・・・急に驚いたでしょう?。こんな年増に言われたら当然よね。ましてや・・・親子ほども違うんだから・・・・・・。でもね、愛し合うのに歳の差は関係ないの・・・その人の温もりが必要と思えば、二人だけの最高の至福を迎えられるはずなの。何だか・・・陽一さんとは初めて会った時から、そんな気がして・・・・・・」
「でも・・・僕はまだ・・・・・・」
「ふふ・・・愛し合うのに、初めてとかそう言うの関係無いの・・・ただ、お互いの肌と肌で温もりを感じ合えればそれで良いのよ。それは、夫婦とか恋人同士とかも関係ないわ。ただ、ベッドの上だけで・・・お互いの気持ちが繋がり合えればそれで良いのよ」
陽一は、悪びれない態度で男女間の関係を話す玲子に、ただ顔を俯いたまま頬を赤らめるしか無かった。
その前までに、異常な愛情表現で玲子の身体を嗜んだとは思えないほどの、謙虚な陽一の姿だった。
「あっ・・・そっか・・・その前に陽一さんの気持ちが乗らないとね。確かに、こんな年増じゃ酷よね・・・さっきは酔った勢い任せだったしね。酔いが覚めたら、結局ただのおばさんで・・・元気にはならないか・・・・・・」
「ですから、酔いはとっくに覚めてました。確かに、あの時は勢い任せでしたけど・・・その前に、ベッドから目を覚ました時から、ママの事を・・・・・・」
「私の事を?・・・・・」
「ええと・・・要するに、ずっと今までは綺麗で素敵なママだと思っていました。変な意味じゃなくて・・・本当にお店のママとして好きでした。でも・・・ベッドで目を覚まして、僕の目の前に居たママはその・・・・・」
陽一は、顔を真っ赤にさせながら、しばらくたじろいでいた。
「どうしたの?・・・恥かしがらずハッキリ言って下さいな」
「だ・・抱いてみたいと思いました!」
それに業を煮やした玲子が尋ねると、陽一は目を強く瞑りながら声を上げて答えた。
「本当なの?・・・・・」
「本当です・・・・・・。初めての相手がママだったら良いなって思っていました・・・・・・。それなのに・・・あんな形になって・・・凄く後悔しています」
「ふふ・・・初めての相手が年増のスナックのママだなんて・・・こっちも後悔するわよ?」
「後悔なんてしません・・・むしろ・・・初めての相手が、いつもお店で優しくしてくれるママだなんて本望です。それに・・・僕の・・・見てください」
陽一は、股を広げると、ボクサーパンツの中でみなぎる膨らみを、玲子に見せつけていた。
玲子に、その対象と打ち明けられてから、駆け巡る妄想と一緒に膨らんでいた。
「あら・・・今度のは本物よね?・・・勢い任せとかじゃ無く・・・・・・。それだったら良いかしら?・・・もし・・・陽一さんの今のお仕事が、順調に進んで上手く行ったら・・・その御褒美にって言うのは?・・・・・・。もちろん、それまでに陽一さんの気持ちが変わらなければ・・・っての話だけどね?」
「もちろん大丈夫です!。むしろ・・・励みになって仕事が頑張られます!」
「ふふ・・・こんな若者を元気づけられるなんて、私もまだまだ捨てたもんじゃないわ。それじゃあ・・・またゲンマンしましょう。今度破ったら、本当に飲ませるからね・・・・・ふふ」
「ええ・・・分かってます。ママと素敵な初めてを過ごせるように頑張ります!」
玲子が小指を曲げて差しだすと、陽一は絡めた。
「は〜い・・・指切った。それじゃあ、必ず約束してね」
「はい・・・それじゃあ本当に、僕はそろそろ・・・・・」
「待って・・・お願い・・・まだ座って」