トリック オア イート-3
各小隊が配置についてまもなく第3小隊改めバニー小隊から各隊に連絡が入った。
「こちらバニー小隊、バニーリーダー。各隊へ連絡、狼が群れを成して侵攻中」
「こちら、ミニスカ小隊。ミニスカリーダー。こちらは食用家畜部隊が侵攻してきた。チャイナ小隊は引き続き持ち場を監視して。バニー小隊、ミニスカ小隊は各戦力にて敵を排除せよ」
「バニー小隊了解」
「チャイナ小隊了解」
高柳が指揮するバニー小隊が配置に付いてすぐ奴等は現れた。
市内に通じる幹線道路に検問を設けて監視していた。
そこへ徒歩でぞろぞろと狼男の群れが現れた。
「トリックオアイート」と口々と叫んでる。
「何だ?悪戯するか、食っちまうぞってか?」
隊員の一人が、つぶやく。
高柳は、敵襲の連絡を各隊に連絡し、すぐに指示した。
「各員、撃て!躊躇うな!撃ちまくれ!」
全員、間断なく射撃を開始する。
高柳も自らM16A4を手に取り銃撃する。
狼男たちは、銃弾さえ通じない不死身の肉体を過信し何の策もなしに前進していた。
しかし、ミニスカ小隊の装備していた銃はすべて狼男の弱点の純銀の弾頭の弾丸だった。
当初、そのことに気がつかず、通常の弾丸と思いおろかにも無駄に前進し銃弾に倒れていく。
撃たれた仲間がいつまでも復活しないことでようやく通常弾でないことに気がついた時には、10分の1までに減っていた。
「兄貴、やばいよ。どうする?」
狼男の一人が、兄貴格にうろたえて聞く。
「ここは、いったん撤退だな」
「うんうん。そうだ、逃げよう兄貴」
「バッカヤロウ!撤退だ。逃げるんじゃねえ!」
そのとき兄貴狼の額から鮮血が飛び散り、崩れ落ちる。
「あ、兄貴!ぐわっ!」
その狼男も胸から鮮血を噴出し倒れる。
狼男部隊に動く者の姿はなかった。
「白兵戦に自信のあるものは!」
高柳の呼びかけに3名ほどの隊員が、手を上げる。
「よし!付いて来い。残党狩りだ。息のあるやつに止めを刺す」
「隊長自ら、行くのですか?死にそこないなどほって置いてもうやがて死ぬでしょう」
「奴等は、人間じゃない。息のあるやつは、蘇ってくる。後顧の憂いは絶っておくに限る」
高柳は、拳銃M92を握り、倒れてる狼男達の中へと歩みだす。
道路上を埋め尽くす死体の数。
わずかの動きも見逃さないよう慎重に歩みを進める。
3名の隊員たちも高柳に習い残兵を索敵している。
「どうやら、息のありそうな奴は、いそうもないです」
「軍曹、気を抜くな!」
突如、軍曹の背後に累々と転がっていた遺体の中から1匹の狼男が、とびかかかって来た。
高柳は、M92を構えるが軍曹と狼男が重なるため撃てない。
とっさに軍曹を突き飛ばす。
軍曹の背中めがけ、振り下ろした爪は、高柳のバニーガールの衣装の胸を切り裂く。
衣装が千切れ右の乳房が露になり乳房に爪の引っかき傷が4本赤く浮き上がってきた。
痛みのため一瞬の隙が生じた。
狼男は、M92を握る右手首を左手で掴みねじりあげた。
狼男の握力でねじり挙げられては、銃を握る握力を維持できるはずもなく、M92は、狼男達の死体の隙間のアスファルトに金属音を響かせ落下した。
さらに開いてる左手で高柳の首を掴み高柳をたてにする。
「ぐっ・・・撃て・・私ごとこいつを・・・撃て!」
「小隊長!」
彼女の傍にいた兵士たちは、後ずさる。
「な・・・何をしてる・・・撃て!」
「無理です!できません!」
「撃てーっ!躊躇うな!」
高柳が叫ぶ。
「そう死に急ぐな」
彼女の耳元で低く小さな声が聞こえた。
狼男は彼女を抱えて道路脇の森の中へと跳躍した。
2、3回の跳躍で、森の奥深くへと姿を消した。
「ちくしょーっ!」
「小隊長ー!」
残された兵士が、森に向かって叫ぶ。