セカンドストーリー-10
女の子の日でもないのにどうして?
お腹に鈍い痛みを感じながら私はゆっくりと上半身を起こした。
自分のそこがどうなっているのか知りたくて少しだけ足を開いて確認する。
そこから出ている白い液体と赤い血液。
どろどろと私の中から出てきて床を汚している。
それを見た瞬間、自分が何をしたのかようやく理解できた。
私は一体なんて事をしてしまったのだろう。
理解した途端に婚約者の顔や両親の顔が浮かんだ。
私のそこはこんな所で使うための物ではなく、婚約者との初夜に大事に破られるはずだった。
それなのに私はここで、しかも婚約者以外の男に抱かれてしまった。
「あ....あっ....そんな....」
今さらどうあがいても何も変わらない。
私は彼とここで体を合わせてしまった。
カチャリと金属音がして、目の端に白い煙が見える。
彼を見れば天井を見ながらたばこを吸っていた。
重苦しい雰囲気。悲しさと後悔で私の胸はいっぱいだ。
どれだけ涙を流しても現実は変わらない。
こんな私を知ってお父様やお母様は何と思うだろう。
心優しい婚約者は私をどう思うだろう。
こぼれる涙。
静かにこだまする私の泣き声。
「そんなに好きなんだ」
煙を吐きながら彼がそう言った。
顔をあげると彼はズボンをあげて髪をかきあげた。
「泣くほど遠峯の事が好きなんだ」
「何を言って?」
「だったらさっさと遠峯とセックスすりゃよかったのに。そうすれば俺に抱かれてそんなに泣くこともなかったのになぁ」
にやりと笑う彼に腹が立った。
どうしてあなたはそんなに笑っていられるの?
私はあなたにボロボロにされて全てを失ってしまったというのに−−。
自分の思いを全てぶちまけてしまいたい。だけど私にそんな度胸はない。
まして彼は裏世界の人間だ。
ここで彼を怒らせたらもっとひどい仕打ちをさせられるかもしれない。
もう終わったのだ。
彼はもう私に用はない。
ここで我慢すればこれ以上ひどい目を合わされる事はない。
「まあ、俺には関係ないけどね。じゃ、お互い楽しい夏休みを。んじゃねぇ」
彼が咥え煙草をしながらひらひらと手を振って教室を後にした。
ふと横を見ればガラスに映ったみじめな自分が見える。
病気かと思うくらい肌は所々赤く、唇や胸の突起物がまだ彼の唾液でぬれている。
それに首筋にひと際目立つように付けられた彼の印がくっきり残っている。
床に広がった血液を見て、私はそっと自分の中に指を入れてみた。
さっきまでの熱も快楽もないが、私の指をいとも簡単に飲みこんだ。
少しだけ入れて出すと、指にべっとりと血液と彼のそれがついていた。
ああ、やはり彼はその世界の人間なのだ。
奪う事しか知らない哀れな人。
私は彼に全てを奪われてしまったのだ。
それでも心のどこかではそれを望んでいたのかもしれない。