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白い世界
【幼馴染 官能小説】

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ファーストストーリー-1

その家の歴史は古くその家の名前を言えば誰もが口々に「知っている」という。京都一、いや日本一の和菓子の老舗『福寿屋』。いつの時代からあるのか正確な年号は不明だが、明治以降、福寿屋は華族や貴族御用達の老舗和菓子屋になった。そんな由緒ある家も時代の波には勝てなかった。

 「では、取引成立という事で」

 悔しそうに父様が下を向いて目をつぶった。
 父様の隣では母様が声を殺して泣いている。そしてそんな二人の前には黒いアタッシュケースに敷き詰められた見たこともない額のお金がある。

 「さあ、里桜お嬢様。我々と一緒に来てもらいましょうか」

 そう言っておじさんが笑う。
 この人は都築さん。同級生のお父様だ。
 
色々と噂のある人で小さい頃から関わってはいけないと言われていた。

 立ち上がりおじさんの側に行く私。

 「里桜!」

 母様が泣きながら私の名前を叫ぶ。そんな母様を父様が苦しそうな顔で止めた。

 分かっている。私さえ我慢すればこの店は建てなおせる。

 二人に微笑んでから、私はおじさんの後に続いて廊下に出た。
 私の周りを知らない男の人が取り囲むように歩いている。

 「度胸のある娘さんだ」

 「え?」

 おじさんが隣でそう言った。

 「自らを犠牲にしてこの店を守ろうとした。普通だったらできる事じゃない」

 この不況の波を受けて福寿屋は倒産寸前だった。銀行もお金を貸してくれず、借金ばかりが膨らんだ。全てがダメになりそうな時おじさんが助けてくれた。

 昔から関わるなと言われていたけど、いい人だった。そう思った。でも、福寿屋にはもうお金を返す物も代価となる物もなかった。そんなおじさんが指定してきたのが私だ。私を代価にお金を貸してくれる。さらにおじさんは私さえよければ、お金は返さなくていいと言った。

 その提案に迷いはない。

 この身一つでこの福寿屋が守れるのなら、いくらでも持っていけばいい。私は福寿屋に生まれた娘なのだから。福寿屋のために犠牲になるのなら何も惜しくはない。福寿屋と共に生き、福寿屋のために死ねるのであれば本望だ。

 「里桜さんだったかな?」

 「はい」

 「里桜さんはうちの息子の....司の事を覚えていますか?」

 その名前を忘れることはできない。彼は私の全てを奪っていった人。

 「もちろん、覚えています」

 「そうですか。今でも息子のことを友人だと思っていますか?」

 その質問にすぐに答えることはできなかった。
 彼と友人だったのはもう昔のこと。
 もう私の中で彼は思い出の人だから−−。


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