富子幻舞-27
そのまま富子はやや俯き加減に視線を落とし、
そのまま目の前に立つ勝元の胸にその頭を預けていた。
「 !!・・・み、御台所様・・・・」
「あの時のように・・・呼んで・・・・」
「と、富子様・・・・・」
流石の勝元も、
密着してしまった富子との距離と柔らかい黒髪と頭の感触に一瞬声を上ずらせてしまっていた。
そんな勝元に構わず富子は目を閉じると、自らの頬を勝元の胸に強く押し付けていた。
勝元が身に付けている着物から漂う彼の臭いが、富子の鼻を擽り、彼女の官能をいやが上にも掻き立てる。
「少しの間・・・少しの間だけ、私を抱き締めて・・・・・・」
「・・・・・・・」
「これが最後・・・最後に強く強く抱き締めてほしい・・・お願い、勝元殿」
「・・・・心得ました」
自分の背中に回された男の両腕の感触、
そして背中から力を込めて抱き締められたことにより
富子は勝元という男とより一層密着し、
より一層彼の胸の鼓動を聞きつつ臭いを吸い込むことになった。
富子は束の間の時間の中で、無心のまま全てを男に委ねることの心地よさを全身で感じていた―――――
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