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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-26

富子と勝元、

2人は互いに古き良き時代の思いの真を確かめあうことができた。


だが時はうつろい、

彼等はもはや古き思い出を挟むことは許されない冷徹な政治の世界にあって、
権力を巡る“敵味方”に分かれてしまっていたのである―――――





富子にとっての
“初恋”の場所である
北山の能舞台。


この能舞台が今まさに、長きにわたった歴史に幕を下ろそうとしている時、

既に立場を異にしていた当事者たる男と女が相まみえる。



まるで運命に導かれるようにして――――










「・・・・・・・」



「・・・・・・」




周囲で舞い散る紅葉にも、
頬を掠める冷たい風にも、

そして時間すらも忘れてしまったかのように、

ただただ相手の顔を見つめる富子と勝元。



この時の富子には、かつて勝元に感じたような胸の奥が掴まれたかのような息苦しさと高揚感を感じていたわけではない。


ただ以前とは違い、熟した女となっていたせいか、
早まる胸の鼓動、肌寒い中でも汗ばむ肌と赤みがかる頬、

そして下腹部の茂みの奥に隠れている“果肉”からえもしれぬ熱を感じてはいた。





夫だけでなく、勝元により開花させられ、

帝や上皇、更には一条兼良や賀茂右近といった男達を通じて、精神的だけでなく肉体的にも立派な女になっていたのだ。



そして富子の目の前に立つ勝元も、
政界の実力者としての年月の積み重ねを通じ、より大人びた風格と老成した顔立ちすら身に付けている。

それは帝の若々しさ、上皇や兼良のような老熟さ、
更には右近のような落ち着きある武辺さとも違うもの。

言わば、精神的に文武両面を併せている状態にあった。










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