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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-25

――――“あの夜”以来、現在に至るまで勝元は富子に対して

“臣下”と“主君の正妻”
という関係を決して崩そうとはしなかった。


当時の富子からすれば、
そんな勝元の態度はあまりに冷然なものと感じられ、

彼女に勝元に対する落胆と失望の念を覚えさせるのに時間はかからなかった。


そんな気持ちを一転、割りきってきた勝元との関係について、
5年の月日を経過したことにより風化しかけた想いに区切りをつけるため、

富子は勝元に何らかの
“答え”を求めたのだ。



「もとより臣下として許されぬ想いでしたゆえ・・・ですが、あの一夜で“私の想い”は遂げられました。

それ以上を求めることは、お互いにとって良き結果にならぬと思いましたから・・・・・」


一方の勝元は、そんな富子の心情を知ってか知らずか淡々とした口調で応じた。




「・・・それが今では、主君と臣下としてだけでなく・・・・政敵、という立場で向かい合うことになりましたね・・・・」



「・・・望んだわけでもなく・・・・まことに人の運命(さだめ)とは図りがたきものです」










「1つだけ、正直に教えてください・・・・。

あの夜私に対する想いとは純粋に私を求めてくれたものだったのですか?」


禁忌を犯してまで富子を求めたのは、
政治家としての打算なのか。

それとも男として本能に従っての行動なのか。

女の側からすれば、全ての“根本”を問いかけるもの。





対して勝元は一瞬ピタリと身体の動きを止めたが、
次の瞬間には首を縦に振っていた。



「はい・・・・細川家当主にして管領という立場や思惑は全て忘れ、

ただひたすらに私の中の想いを遂げたいと感じたゆえの行動でした。

それだけは信じていただきたいと存じます・・・」



「私も・・・私もあの時将軍御台所という立場を忘れ、
1人の女として貴方を受け入れていたのです。

そのことに私は悔いはありません」



「御台所様・・・・・」




いつしか2人は歩を止めて、
互いの想いの真実を確かめようとするかのように
向かい合い見つめあっている。








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