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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-24






―――チュン・・・チュンチュン



―――朝の小鳥のさえずりが微かに屋外から聞こえてきた頃、寝床にうつ伏せの状態で富子を目を覚ました。


意識を失う直前には傍らに横たわっていた勝元の姿は既に寝間から消えている。


「・・・・・・」



気だるいままの身体を起こし、ぼんやりとした頭を引きずりながら周囲を見回す。

寝床の上で乱れた自分の衣類を掻き寄せながら、昨晩のことはうたかたの夢であったのかと一瞬思う富子。


しかし

富子自身の身体に残る愛撫と勝元自身の痕跡、


そして何より
次の間に残されていた能面が

昨晩の出来事が決して
“うたかたの夢”
などでなかったことを示していた。










島島島島島島島島島島島
島島島島島島島島島島島


―――ザクッ、ザクッ、ザクッ・・・・




「・・・あの時以来、一度も忍んで来てはくれませんでしたね」



紅い絨毯が敷き詰められたかのような演舞台の周りを並んで歩む2人。

互いに目を合わせることなく、ただぼんやりと赤みがかった周囲に目をやっている。

懐かしい“過去の記憶”を共に追憶しつつ、
最初に口を開いたのは富子の方だった。

多少冗談めかしてはいるものの、富子の口調にはどこか怨みがましさが隠っているように聞こえる。








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