THANK YOU!!-1
思い切り飛び出してきた菜美の姿をいち早くに見つけたのは、
瑞稀たちを見守っていた秋乃と千晴だった。
そして、菜美の持っているモノに気づいた時、叫びに似た声をあげた。
「!!」
「瑞稀!逃げて!!」
二人は、フェンスから飛び出した。
瑞稀はその言葉で後ろを向いた。
すると、すぐ目の前にカッターナイフを持って襲いかかろうとしている菜美が迫っていた。
「・・っ!!」
「うあああああぁ!!」
悲しみに暮れる菜美の叫び。
その全てが、心の葛藤を意味していた。
瑞稀はその意味に気付けたが、身体を動かすことができなかった。
「「瑞稀!!」」
「っ・・」
狙いはただ一人。
瑞稀。
そのカッターの刃が真っ直ぐ瑞稀に降りおろされた。
しかし・・・痛みは全く来なかった。
だが、ザシュッという肉を切る忌々しい音と血のようなサビの臭いはした。
どうなっているのか解らなかった瑞稀はそっと眼を開けた。
「・・・!!」
「・・・八神、平気か・・?」
眼を開けたすぐ目の前に、特徴ある寝癖の後ろ姿が入った。
ちょうど、襲いかかろうとした菜美との間に入り込むようにして・・。
その菜美は、驚きと戸惑いでカッターを握り締めたまま震えていた。
カッターには、赤い血が・・・。
それを誰のか瞬間的に悟った瑞稀は、拓斗を見た。
拓斗の左手が真横に切りつけられていた。
その左手は瑞稀を守るためにカッターの切っ先を受け止めて刃をずらしたのだ。
「拓斗っ!!」
思わず、悲痛の叫びをあげて自分を守るために伸ばされていた拓斗の右腕を引っ張った。
左手からは血が滴っていて、屋上の床である緑色を変色させてしまっていた。
瑞稀は、拓斗の正面に立った。その顔は、恐怖と自分を庇わせてしまったという思いが溢れていた。
「・・・拓斗・・」
「・・・大丈夫だよ。これくらい。」
「でもっ!!」
瑞稀が血が止まっていない左手をつかんだ。
それを見た拓斗が慌てて離そうとした。
だが、瑞稀は聞かず、左手を両手で握り締めた。
その目には、涙が溜まっていた。
「千晴!先生呼んで!」
「わ、分かった!」
瑞稀たちの所へ駆け寄った秋乃が千晴を動かした。
そして、拓斗の傷を見た瞬間、菜美への怒りを爆発させた。
今にも殴り倒しそうな勢いだ。
「っ、菜美てめえ!!」
「秋乃!ダメ!」
「柊、やめろ!」