第34話 最後の至福-1
やがて、みなぎりが落ち着くと、慶は睦美の元へ歩み寄った。
そして、ベッドに腰を下ろすと、睦美の肩を抱いた。
その姿は、睦美を母親と想う面影は無くなり、恋人としての営み前の語りべのようだった。
「睦美さん・・・僕は、睦美さんと出会えて幸せでした・・・・・。僕にとっては、母さんのような存在でしたけど・・・それでも・・・それでも睦美さんの事は、今でも愛しています!・・・・・。もし・・・もし今度生まれ変われたら、睦美さんと同じ時代に生まれて・・・もう一度、睦美さんと出会いたいです!・・・・・。」
まるで今生の別れを告げるような慶の目には、薄らと涙が浮かんでいた。
それを聞いてる睦美も、同じように目を赤くしていた。
お互い何度泣いても、涙は枯れる事は無かった。
「もう馬鹿ね・・・いつまで経っても、慶は慶のままね・・・・・。そんな頭ガチガチじゃ・・・いつまで経っても新しい彼女なんて出来ないわよ・・・・・。ほら!・・・もっと笑って!・・・最後なんだから・・・・・。」
「あっ・・・それと・・・新しい彼女が出来ても、元カノがおばさんなんて言わない方が良いわよ・・・マザコンだって嫌われちゃうからね・・・・・。」
睦美は、涙を流すまいと明るく振舞った。
それは初めて出会った時に、慶を気遣うようにあどけなく接してくれた時と同じようだった。
だが次を話す時は、表情は真剣な面持ちになった。
「それともう一つ・・・私も慶の事は愛してる・・・・・・。今度生まれ変わったら・・・一緒になりましょう・・・・・・。」
「睦美さん・・・・・。」
その言葉に、慶は意を決したように睦美を見つめると、そのまま唇を重ねて、ゆっくりとベッドに・・・・・
『やがて我慢できずに・・・・・私の元へ誘われ・・・・・二人は落ちて行く』
・・・・・押し倒して、身体を重ねた。
お互い、機が熟された身体は、最後を惜しむかのように戯れていた。
慶は、交わす口づけの中で、睦美の手つきでみなぎりだすと、事前に準備しておいたテーブルの上の四角い子袋に、手を運ぼうとした。
しかし、睦美はそれをを遮るかのように、慶のその手を握った。
「慶・・・そのままで良いの・・・今日は、そのままで良いの・・・・・。そして・・・お願い・・・最後は私の中で・・・・・。」
その言葉の意味は、慶にもすぐ理解できた。
睦美は、ただ慶を感じたいが為に、その後を考える事が出来なくなっていた。
最後の至福が、最高な物であるならば、家庭をも壊すような勢いだった。
慶は、睦美の気持ちを察したかのように、黙って頷いた。
そして、睦美の足を掻きわけると、身体を割りこませて、交わす準備をした。
その中で、慶はみなぎりを睦美の物へ添えると、上下しながら、ゆっくりと睦美の中に沈めて行った。
初めて感じる、その生温かい睦美の感触に、慶のみなぎりは先走っていた。
慶は、みなぎりを落ち着かせようと、口づけを交わした。
やがて落ち着くと、口づけを交わしながらも、そのまま奥まで納めた。
慶は口づけを止めると、睦美の両膝に手を添えて、ゆっくりと刻んだ。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・」
睦美は、自分の中で往復する物を感じると、徐々にと息遣いが荒くなった。
やがて腰つきが大きくなると・・・・・
『そう・・・・ゆっくりと私の中で・・・・何度も深く・・・・・交差する摩擦に・・・・・繋がる悦び・・・・・。』
・・・・・悦びの声へと変わった。
「あっ・・あっ・・そうよ・・・良い・・・良いわ!・・・あっ!・・あっ!・・・・・。」
慶は、悦びに誘われるかのように、睦美の身体をねじっては、体位を変えて嗜んだ。
やがて背後に回ると、睦美を四つん這いにさせて腰に両手を添えると、後ろからも刻んだ。
「もっと・・・もっと奥まで・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
睦美は、体位から変わる慶の物に、さらなる快楽を求めた。
睦美に促されると、慶の腰つきは激しくなるが、頂点を感じる度に、胸元をまさぐりながら・・・・・
『お互いの温もりを感じながら・・・・・繰り返される行為の中で・・・・・何度も交わす口づけ・・・・・。』
・・・・・・背後から口づけを交わして、みなぎりを落ち着かせていた。
そして、再び刻んだ時に終演が近い事を、慶は感じていた。