第33話 恥じらいの黄土色-1
「許して下さい・・・・・。」
やがて慶が合図するかのように謝ると、指先は拒む先で止まり、睦美の物で濡れた指先で滑りを良くしながらゆっくりと沈めていった。
「いやっ!・・・いやっ!・・・・・。」
睦美は、初めての違和感と痛みに快楽を忘れて、悶絶しながら声を上げた。
「もう少しですから我慢して下さい・・・・・・。」
慶はそう言いながら、声を上げる睦美の口を封じるかのように、唇を重ねた。
そして指先は、拒む先の奥へと沈められ、やがて全てが納まると睦美は静かになり口づけを交わしだした。
それは、違和感から逃れようと、快楽を求めたからだった。
しかし、慶の指先は容赦なく往復した。
「いやっ!・・・駄目よ・・・駄目!・・・・・。」
再び睦美に、痛みと同時に湧く違和感が走ると、口づけから逃れ、声を上げて悶絶した。
「もう少し力を抜いてください・・・・・。そうすれば必ず至福が訪れるはずです・・・・・。僕を信じて下さい!・・・・・・。」
「だ・・・だって・・・慶の指先が私の・・・私の中の・・・そんな所に・・・・・。」
「はあ・・・はあ・・・僕なら平気です・・・愛してる人のだからこそ平気なんです・・・・・。だから・・・僕を・・・僕を信じて下さい!・・・・・・。」
「わ・・分かったわ・・・・・。でも・・・でも・・・あっ・・・あっ!・・・・・。」
「そうです・・・そのままゆっくりと足を開いて下さい・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
やがて、慣れから痛みが治まると、往復する違和感だけが残り、睦美は再び静かになった。
睦美は、慶の腕に抱かれ静かになりながらも、往復する違和感に、初めて感じる快楽が芽生えてきていた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
慶は胸元で、睦美の息遣いを感じると、余った指先を一点に当て振動させた。
「あっ・・あっ・・駄目・・・あっ・あっ・・・いやっ・・・駄目・・・・・。」
睦美は再び悶絶したが、それは快楽によるものだった。
まるで、複数から責め立てられて、挟まれるような強烈な快楽が、睦美を襲っていた。
慶は、胸元で悦ぶ睦美の髪を撫でると、自己陶酔したかのように、その表情を眺めていた。
ここまで慶を駆り立たせていたのは、睦美に対する嫉妬心からだった。
睦美が慶を虜にしようと尽くしたように、また慶も、睦美を虜にして政俊の元から離そうと考えていたからだ。
それは幼稚な考えで、浅はかに思いながらも、目の前の悦ぶ睦美を見ると、後悔は無かった。
全ては、ネットで得た知識だが、これを全て注ごうと、慶の手つきは悦びを探るように睦美の呼吸に合わせた。
「はあ・・・はあ・・・もう駄目・・・はあ・・・はあ・・・・お願い・・・慶・・・このまま私を・・・私を・・・はあはあ・・・・・。」
睦美は我慢できずに、このまま慶に至福を求めた。
それを察した慶は、睦美の胸元に顔を沈めながら、手つきが激しくなった。
「あっ・・あっ・・・もう駄目・・・私は・・・私は・・・あっ・・あっ・・・慶!・・・慶!・・・・・あっ!・・・・・・。」
睦美は、慶の手つきに合わせるかのように乱れて、身体を反りながら至福を迎えた。
至福を迎えた先には、愛しき者に沈められた指先の違和感だけが、恥じらうように残っていた。
慶は、睦美の至福を感じると、それを称えるかのように口づけを交わして、その口づけで睦美が違和感を紛らわしてる間に、指先をゆっくりと抜いた。
その指先は、至福の代償としての、恥じらいの黄土色で汚れていた。
睦美は交わす口づけの中で、ここで果てた無念さと、それを揺るぎ無くさせた慶の男としての成長に、頼もしくもありながらも、別れを感じると複雑な思いでいた。
「睦美さん・・・すみませんでした・・・・・。」
慶は口づけを止めると、睦美に対しての恥辱的な行為に謝罪した。
「ふふ・・・お母さんはどこにいったのかしら?・・・・・。良いのよ・・・全ては、この日だけの事・・・・・・。最後くらい楽しみましょう・・・・・・。」
睦美は、恥ずかし目を受けながらも、笑みを浮かべて気丈に振舞った。
それは、行為に満足しただけでは無く、愛しき人だけと共有できた喜びがあったからだ。
睦美の気持ちをここまで許させたのも、慶と初めて肌を交わした時に感じた、独特の不思議な空気があったからだ。
それだけ、距離が縮まった証でもあり、皮肉にも、お互い別れ際になって感じていた。
「睦美さん・・・シャワーでも浴びますか?・・・・・。」