第27話 異常な母性-2
「慶は、これから絵を描くのに、自分も裸になる事を怪訝に思った。
それでも、睦美の醸し出す官能的な雰囲気に呑まれ、Yシャツのボタンに手を掛けた。
睦美は、お互いが生まれたままの姿になると、慶をベッドの背中越しに立たせた。
「慶・・・・・。」
しばらく見つめ合うと、睦美は慶に抱きついて、ベッドに押し倒した。
慶は突然の事に驚きを見せながらも、睦美の口づけに落ちていった。
二人はしばらく交わすと、睦美が慶の右懐に身体を移して、みなぎりに手を添えた。
この日は、睦美が責め立てていた。
普段は、ほとんど無い事なのだが、その理由は後ほど分かるのだった。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
室内は、睦美の手つきに誘われる、慶の声が響いた。
その中で睦美は、慶に責め立てる隙を与えまいと、首筋、胸へと口元を走らせた。
慶は、苦悶の表情を浮かべて、睦美に溺れていった。
やがて、手つきを止めると、睦美は慶のみなぎりの前に座り、それを口に含んだ。
今まで、お互いの心と身体を繋げた物を、睦美は感傷深げに、舌を使いながら嗜んだ。
悶絶する慶を尻目に、睦美の口元は何度も往復した。
思わず慶は、シーツを両手で握りしめた。
「はあ・・・はあ・・・睦美さん・・・僕もう・・・・・。」
慶はたまらず、睦美に頂点が近い事を促した。
それでも睦美の口元は、容赦なかった。
ジュポッ・・・ジュポッ・・・・・
慶は、睦美との最後を、このまま終わる事を心苦しく思うのだが、すでに時は遅かった。
「あっ!・・・あっ!・・・睦美さん!・・・・・。」
慶は、声を上げると、睦美の中に勢い良く放った。
それは焦らされた分、溢れ出るほどだった。
睦美はそれを、喉を鳴らしながら含んだ。
愛する人の物だからこそ、惜しみなく絞りながら・・・・・。
「睦美さん・・・はあ・・・はあ・・・僕・・・・・・。」
申し訳なさそうな顔で慶は、自分の物を口で綺麗にする睦美に視線を送った。
ピチャ・・・ピチャ・・・・・
「ふふ・・・良いのよ・・・これからだから・・・・・。」
ジュルル・・・・・
「美味しい・・・・・。」
睦美は、始めから慶に果ててもらうつもりでいた。
これから向かえる、最後の至福を濃密な物にする為にも・・・・・・。
そして最後は、一度きり・・・睦美は至福の時を、愛する慶と長く共有したかった。
「さあ・・・私を描いて・・・・・。」
睦美は立ち上がると、あの時と同じ、内側のベッドに向かい、足を右横に崩して左手をベッドに付いて、同じポーズを決めた。
そして、慶は裸のまま向かい側のベッドに座り、リュックからスケッチブックを取り構えると、あの時と同じく表情が険しくなった。
お互いの気持ちは、あの時から何も変わって無かった。
それは、複雑な伏線が絡み、解けて元に戻っただけだった。
結局辿り着いたのは、『求める母性』・・・『若い身体』・・・その真意が明らかとなり、もう一度、肌を交わした先の答えを、二人は知りたかった。
そして今、最後のデッサンが始まった・・・・・。