第16話 温もりの果てに・・・・・-2
「慶君・・・・・。」
そして、そのまま慶に抱きついて唇を重ねると、体重を掛けるように後ろに倒れ込み、慶の体が睦美の脚の間になるように二人は重なった。
二人は、これから迎える終演に、すべてを捧げるかのように熱くなっていた。
時には、髪をかき乱し、胸で溺れ、口づけを交わしながら愛を確かめては、それぞれの想いが悦びとなって迎えていた。
そこには、すでに歳の差は無く、お互いが本能のままに快楽に溺れていった。
やがて睦美は、向かい入れようと、抱きしめてる慶の身体から両手を離した。
身体をベッドに預けるように、横を向いた睦美の顔は、まるで求めるような表情だった。
それを察した慶は、睦美から身体を離すと、交わす準備をした。
しかし、初めてと緊張が重なり、睦美の中で何度も上擦っていた。
次第に焦りから、みなぎりも引いてしまい、益々困難となった。
睦美はそれに気付くと、嫌気が差す事なく上半身を起こして、口づけを交わしながら手でみなぎりを誘った。
「大丈夫よ・・・落ち着いて・・・・・。」
睦美は、やさしく笑みを浮かべながら言葉を掛けて、慶の焦りを落ち着かせた。
そして、睦美が手で誘うように、みなぎりを自分に納めると、慶は睦美の中へとゆっくりと沈めていった。
その中で、被せてる上からでも感じる、初めての生温かさに、さらにみなぎりだしていた。
「あうっ!・・・・・。」
睦美は、思わず声が出た。
政俊と一緒になってから、それ以外を受け入れたのは初めてだった。
比べたく無くとも、明らかに違いが分かった。
それは、若者ゆえのみなぎりに溢れ、慶と繋がった喜びと同時に、睦美の胸を高鳴らせていた。
それは、慶も同じだった。
愛しく想う相手と繋がる喜び、それが初めての人・・・・・慶に取っては、全てが特別な日で、それを一緒に迎えてくれるのは睦美だった。
そして今、その先にある真意を確かめるべく、二人は頂点へと向かった。
慶は、開いた睦美の両膝に両手を添えると、ゆっくりと刻んだ。
やっとの思いで繋がった事を考えると慎重だった。
「はあ・・はあ・・はあ・・・・・」
次第に、腰つきが大きくなると、睦美は息を荒げた。
その官能的な表情に誘われ、慶は体重を掛けるように抱きついた。
二人は口づけを交わすと、繋がりを感じながら、汗と一緒に肌を交わした。
「慶君・・慶君・・はあ・・はあ・・はあ・・・。」
睦美は、慶の身体に包まれて激しく乱れた。
あの列車で思い描いた情景のように・・・・・。
「はあ・・・はあ・・・睦美さん・・・はあ・・・はあ・・・僕・・・僕もう・・・・・。」
慶は、若さと未熟さゆえに、すでに頂点が見えていた。
「はあ・・・はあ・・・いいのよ・・・遠慮しないで・・・・・。」
睦美は、慶に抱きついて耳元で囁いた。
それを聞いた慶は、頂点に向けて激しく往復させた。
「あっ!・あっ!・あっ!・あっ!・あっ!・・・・・。」
慶が刻むたびに、睦美の声はそれに合わせるかのように連呼した。
やがて頂点が近づくと、慶は両手をベッドに付いて振り絞った。
睦美は、最後まで繋がりを感じたく、慶の両手を重ね合わせて握った。
やがて・・・その時・・・・・。
「睦美さん!・・・睦美さん!!・・・・・。」
『・・・・・慶・・・会いたかった・・・・・』
・・・・・!?・・・・・
愛しき人を連呼しながら、慶は果てた・・・・・。
それは、中に脈打つ物で、睦美にも伝わっていた。
慶は、その瞬間に襲う喪失感に怯えるかのように、睦美に抱きついた。
「良いのよ・・・良いのよ慶君・・・・・。」
睦美は、慶の顔を胸元まで引き寄せると、やさしく抱きしめ手繰り寄せた。
二人は、しばらく繋がったまま、温もりを求めていた。
偽りのデッサンの先にあった真意は、睦美を満足させていた。
それは、心も身体も全てにだった。
政俊への不満から始まり、慶のような若者に出会えた喜びを改めて実感していた。
今はただ、慶を手放したくない気持ちでいっぱいだった。
そう思うと睦美は、今まで以上に力強く抱きしめた。
しかし、その腕に抱かれた慶の表情は、何かに怯えるかのように目を見開いては、ただ一点を見つめていた・・・・・。
・・・・・慶・・・会いたかった・・・・・