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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第11話 モーテル通り-2

しかし、大人しい年下の慶は、気兼ねせずわがままが言えるところが、どこか居心地が良く、自分を出せる相手でもあった。
慶も、そんな気兼ねせず接してくる睦美に、徐々に打ち解け始めていた。

「睦美さんの旦那さんは、どんな人ですか?・・・・・。」

「えっ・・・私の旦那?・・・どうして聞くの?・・・そんな事・・・・・。」

車内が少し静かになると、珍しく慶から話した。
慶が、相手の素生に対して滅多に聞く事は無いのだが、これは睦美に対して慣れてきた表れからだろう。
しかし、この会話が睦美の機嫌を少し損なわせた。
やはり、これからの過ごす時間を考えると、政俊だけの事は思い出したくなかったからだ。

「い・・・いやっ・・・ただ僕は・・・睦美さんのような人の旦那さんですから・・・何かお洒落な感じで・・・凄く素敵な人かなと思って・・・つい・・・・・。」

「だと良いんだけどね・・・・・。本当に冴えない人だわ・・・昔は良かったんだけどね・・・本当に・・・・・。今は、仕事、仕事で私の事なんてちっとも構ってくれないの・・・そうね・・・慶君のお父さんと同じかしら?・・・・・。」
「でも・・・慶君のお母さんは羨ましいわ・・・だって・・・慶君が居るから、寂しくなんて無かったと思うわ・・・・・。それに比べて・・・私なんて、いつも一人ぼっち・・・今もね・・・・・。ごめん・・・変な話しちゃって・・・もう止めよう・・・・・。」

「す・・・すみませんでした・・・何か嫌な事、思いださせちゃったみたいで・・・・・。」

「良いのよ別に・・・私達だけの問題だから・・・・・。ただ・・・今だけは思い出しくないの・・・今だけはね・・・・・。」

慶は、睦美の気品漂う身なりを見て、勝手に夫のイメージを作り上げていた。
それは、お互いが同じ価値観に触れ合い、その中で幸せな生活を送ってるようにも見えたからだ。
しかし、睦美から出た言葉は、慶が思い描いてた物とは違い、どこか冴えない感じで、お互いが冷めた関係だった。
慶はその言葉を聞いて、睦美の機嫌を損ねてしまった失態感の中にも、どこか安心したような気持ちもあった。
それは、慶が睦美と過ごしてるこの時間を、睦美の夫が毎日共有してるかと思い、嫉妬心にも似たものが込み上げていたからだ。
慶は、睦美に対する独占欲が徐々に湧いてきたのだ。
その現れから、あえて夫の事に着いて触れてみたのだった。

睦美は、あれから窓際を眺めては、言葉を交わす事は無かった。
しばらく一本道も続き、案内する事も無く沈黙が続いた。
慶も、話しの切っ掛けを作ろうと窓の風景に目をやるが、生憎辺りは、森林に囲まれた殺風景な道路だった。
気まずい流れを変えようと、周りの風景を食い入るように見てると、派手な色彩の建物が奥の方から見えてきた。
慶は、その建物に対して話題を振ろうと安心した時だった。
徐々に近づいて大きく見えてきた建物は、何とモーテルで、しかも、左右に何軒も続いた。
ここは車通りの少ない道路で、先には海水浴場などがあり、その遊び帰りのカップルなどを狙って建てられたモーテル通りだった。
話題を作るどころか、逆に針のむしろになってしまい、その話題に触れないでは不自然なくらいの派手な建物が、何度も流れた。
その度に慶は生唾を飲んで、やり過ごすのだった。
まだ、異性と肌を交わした事も無く、当然立ち寄った事もない建物に尚更だった。
二人は、それぞれの想いに沈黙していたが・・・・・

・・・・・・シュッ・・・・・シュッ・・・・・

突如、BGMも流れてない静かな車内に、ナイロンが擦るような摩擦音が響いた。
それは・・・魅惑の囁き・・・・・。


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