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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-6


田中先生が戻ってきて、事態を簡単に説明された二人の先生は、ちゃんとした説明を中岡先生に求めた。
その横で、秋乃が南京錠を壊す田中先生を急かしていた。

「(・・く・・なんでアイツが・・閉じ込められてんだ・・。何も、なきゃいいけど・・)」

そう考えて思い出すのはしばらく前の、瑞稀を見る菜美の冷たい目線。
それがリアルに思い出されて、背中に寒気が走った。

「(まさか・・いや、違うだろ・・)」

嫌な考えを振り払うと、改めて体育館倉庫の扉を見た。
ただ、ただ、瑞稀の無事を祈っていた。
見た目以上に、瑞稀を心配していた。
握りしめる手に・・強い力がこもる。

「・・っ・・。っよし!壊せたぞ!」

ガキンという鈍い音を立てて、南京錠が転がった。
その音を聞いた中岡先生が、持っていた体育館倉庫の鍵を回した。
そして、1時間ぶりに・・倉庫が開放された。

田中先生と拓斗で勢いよく扉を開けた。
そのとき、冷たい風と鈍い錆びっぽい臭いがした。
倉庫手前や棚は何も、変わった所はない。
そして、奥に視線をやると、そこには異様な光景が広がっていた・・。
男二人が、言葉を失った。
そんな二人に不思議に思った秋乃を含む女性軍が覗き込んだ。
そして・・眼を見開いた。

奥には、割れて飛び散った木の板の残骸や窓ガラス。
床には、小さな血だまりが出来ていた。サビっぽい臭いは、血の臭い。
そして・・その血だまりの中で倒れているのは・・。

「八神!!」「瑞稀!!」

本能的に、反射的に名前を呼んだ拓斗と秋乃は倒れて気を失っている瑞稀に駆け寄る。
そして、先にたどり着いた拓斗が血だまりを気にせず、瑞稀を抱え上げた。
秋乃が必死に呼びかける。

「瑞稀!瑞稀!瑞稀!」
「しっかりしろ!八神!」

その子供の声に我に戻った先生たちも、かけよってくる。
すると、保健室の先生が「とりあえず、ここから出ましょう。衛生的に良くないわ」と声をかけ、田中先生が瑞稀を抱き上げた。
その時、拓斗の目に入ったのは血だらけになった瑞稀の左足・・。

「っ!!八神、足が・・!!」
「え・・!?・・ぁっ・・瑞稀・・!」

未だに止まらない血はポタポタと、床に落ちる。
それを見た拓斗は咄嗟に、自分の着ているシャツの袖を引き裂いた。
そして、それで瑞稀の足首に当てる。
血が落ちないようにするため。傷の場所に当てないのは、万が一の時のため、雑菌が入らないようにと考えたことだった。
といっても、TVでやっていたことを瞬間的に思い出しただけだ。



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