THANK YOU!!-3
教室。
自分の机の上に座り、壁時計とにらめっこしている少女ー秋乃は何度教室のドアを見ただろうか。
瑞稀が運動委員の仕事で残るので、自分は教室で待っている約束をしていた。
だが、瑞稀が出ていって約一時間。
帰ってくる気配は微塵もない。
だいぶ前に、外倉庫の確認を終えたのは窓から見えた。
だからすぐに帰ってくると思っていた。
でも、それからだいぶ時間が経ち・・帰ってこない。
「・・何やってんだろ。瑞稀は・・」
だんだんイライラしてくるが、今までにこんな事は無かった。
勿論、数える程しか瑞稀を待ったりしていないが。
「・・何か、あったのかな。」
秋乃がそう不安に思っていると、教室の扉が開いた。
その音に弾かれるように、秋乃は期待に満ちた顔でその人物を見た。
しかし、残念ながら秋乃が心待ちにしている親友じゃなかった。
「・・・なんだ、鈴乃か」
「・・なんだって何だよ。」
教室に入って早々、まるでお前に用事はないとばかりに呆れた声を出されて、さすがにイラっときたのは、拓斗だった。
「何で、残ってんの?」
「・・放送委員の仕事。八神みたいに委員長とまではいかないけど、なかなか用事押し付けられる立場になったから」
「ふーん」
自分で聞いておきながら、早くも興味をなくした秋乃はすぐ時計へと視線をずらした。
一方の拓斗は、イラッとしたが、いつもと違う様子なのに気づいた。
「・・どうかしたのか?」
気になってふと、聞いてみる。
秋乃は言っていいのか迷って、少し沈黙を作ったが口を開いた。
「・・・瑞稀が、戻ってこない。」
ぽつりと出た言葉に、拓斗は最初反応できなかった。
しかし、理解出来ると驚いた。
「八神が戻ってこないって・・どういうことだよ」
「だから!運動委員の仕事で、倉庫の見回りしてんだけどもう一時間も帰ってこないんだ!外にいたのはだいぶ前に見たけどそれっきりなんだよ!」
不安だった気持ちが、いっぺんに溢れて、戸惑う。
だが、言ってしまった以上、戻れない。
それに、この不安さから開放してくれるのなら、拓斗でも誰でも良いから気持ちをぶつけたかった。
拓斗は、珍しく気持ちをぶつけてきた秋乃に驚くと同時にそれ程尋常じゃない状況だと理解した。
視線を、瑞稀の席へ。
その机には、まだランドセルが乗っていた。
「・・とりあえず、先生に聴きに行こう。もしかしたら、何か知ってるかもしれない。」
秋乃へ視線を映した拓斗はなるべく優しく、思いついた提案を言った。
「・・うん」
そして、いつもなら憎まれ口を叩く秋乃が素直に頷いた事を確認すると二人で夕焼け色に染まる教室を出た。
拓斗も、ココロの片隅に少しの不安を覚えて・・・。