THANK YOU!!-11
拓斗の右手が動いたのを見て、思わず殴られると思った瑞稀は身構えた。
だが、来るだろうと思っていた痛みは無い。
それどころか、フワッとした優しい温もりを感じた。
自分が、欲しいと願っていた温もり。
その温もりに嬉しくなったが、思わず、顔を上げた。
拓斗が、呆れたり怒ったりしている顔をしていると思いつつも。
だが・・
「・・え・・」
その予想は大きく翻された。
拓斗は、凄く悲しい表情をしていた。
「・・・・」
「・・強がんなくていい。弱い所も、見せていい。俺は、そう思ってる。だから、だから・・」
「・・鈴・・乃・・?」
今まで見たことがない拓斗の様子に、ついて行けない瑞稀。
驚くことしか、出来ていない。
そんな瑞稀に構う余裕が無い拓斗はこれ以上無いくらい顔を歪ませた。
「一人で、泣く事だけは・・すんな・・」
「・・・!」
身体全体に、伝わる暖かい温もり。
ギュッと力強く、抱きしめられる。
力任せ、強引、そう見えるが、ちゃんと瑞稀の怪我した足のことも気にされている。
まるで、存在を確かめるような・・でも、安心させられるような・・。
「・・・鈴乃・・ゴメン・・」
「何で、謝るんだ・・?俺は・・」
言葉を続けようとした拓斗を黙らせるかのように背中に回した腕の力を強くする。
そして、拓斗の胸に顔をうずめた。
「・・ゴメ、ン・・」
その言葉に、先程までの不安が全部詰め込まれていた。
怖くて、苦しくて、痛くて、寂しくて・・。
全ての感情が込められた言葉に気づいた拓斗は、瑞稀の頭をできるだけ優しく撫でた。
「怖かったな・・。よく、頑張ったな。」
「・・っ・・・う・・」
「もう、大丈夫だ。」
「っ・・、う、あ・・うあぁぁぁあ!!」
拓斗から与えられる、唯一求めた温もりと言葉に、瑞稀は初めて自分の為に涙を流した。
自分の心に深く刻まれた傷の痛みを、訴えるかのように・・。