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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-10



身体の震えが、収まらない。

凄く、怖い。

板を蹴破った時に感じた強い痛みが、今も感じる。

血の臭いが、まだ残っている。

気持ち悪い。

でも、自分の無事を心から喜んでくれたみんなに、余計な心配かけたくない。

大丈夫って言わなきゃ、絶対心配する。

強いから、あっけらかんとしてるから。

いつからだろう。自分の為に、泣かなくなったのは。

母親が死んだとき、泣いた。

でも、それは、母親や家族を思って泣いた。

自分の為に泣いたことは、あったっけ。

小さいころから、我侭言わないようにはしてきたけど・・


「・・・・っ・・・」


頭が、痛い。

足が、痛い。

手が、痛い。

・・・心が、痛い。


「・・・・寂しい・・」


「・・・・苦しい・・」


「・・・・怖い・・・」


「・・・・た、く、と・・・」


ふと、口から出た。
言葉3文字の・・名詞。絶対に、呼んだこともない言葉。
だけど、何故か心の奥底から出た言葉。

瑞稀はベッドの上で体育座りをすると、両手で布団を握り締めた。
でも、その手に触れるのは無機質の冷たさ。
いくら握り締めても、暖かく感じることはない。
今。自分が、求めている温かさは・・たった一人の、体温。
不器用に、でも、安心させるような温かさを持つ手で頭を撫でてくれる。
そんな優しさの籠った・・温もり。

「・・・バカみたい。なんで「友達」に、こんなの求めてるんだろ・・。」


小さく自嘲すると布団を握り締めていた手を離した。
自分が、以前言った「友達」という言葉にトゲが刺さったような痛みを思い出す。
こんな感情、生まれて初めてでどうしたら良いか分からない。
小さく息を吐く。

「・・もう、寝ようかな・・」

そう呟いてみたものの、怖い夢を見そうで怖い。
だが、寝ないと悪い方向へ考えが飛びそうでもあった。
未だに震える体をもう一度抱きしめると、視界にもう一度左足が写った。

「・・頑張ったね。ありがとう、ゴメンね。」

自分の膝に、おデコを当てた。
すると、ガラッと大きな音が瑞稀の耳に届いた。
慌てて顔を上げて、視線を病室の入口に向けると、そこには息切れをした拓斗の姿があった。

「・・・鈴乃・・」
「はぁ・・はぁ・・」

驚いた瑞稀だったが、すぐに笑顔を作っていつも通りに接する。

「どうしたのー?忘れ物?」
「はぁ・・ちが・・」
「うーん、多分忘れ物とか無かったって看護婦さん言ってたけどなー」

ベッドから立ち上がった瑞稀は左足の痛みを抑えて荷物置き場の方に近づく。
荷物置き場は、入口側。つまり、今息切れしている拓斗の隣。
だから余計に、バレないように振舞う。
一番温もりを求める人だから、一番心配かけたくないし、弱いところを見せたくない。

「だから、聞け・・!」
「ま、明日看護婦さんに聞いとくよー。だから今日は帰った方がいいかもね!」
「・・っ!もうやめろ!!」
「・・・!!」

笑顔で向き直った瑞稀に、拓斗の低い声が病室に響いた。
驚きと、図星で動けなくなった瑞稀は拓斗に腕を引かれ、ベッドに座らされた。

「・・・・バカかお前。」
「・・・」
「・・お前が、無理して笑ってるの、バレバレなんだよ・・。
 手、ずっと震えてるし・・」
「・・・」

気づかれていたことに、いたたまれなくなった瑞稀は顔を上げることが出来ない。
多分、拓斗は凄く怒った・・もしくは呆れてる顔をしてる。
そんな顔にさせたくなくて、笑顔を振舞ったつもりはない。
ただ、ただ嫌われたくなかった。
いつまでも、顔を上げない瑞稀に拓斗は強硬手段に出た。
右手を、動かした・・。



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