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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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アシュラ-1

 私がドアに辿り着くと、そこは固く閉ざされていた。
私はアニョンに心の声で話しかけた。

『クルッチル・クース、大丈夫か?』

『あなたは……口を狙えと教えてくれた人ね』

『今助けに行ってやる』

『大勢いるよ。危険だよ』

『心配ない。今いる場所を教えるんだ』

『小さな部屋に押し込められた。だけどオフラインできない。
アバターとゲーマーが離れることができないゲーマーボンドをつけられたらしいから』

『わかった。だが私は君が勘違いして逃げた者だ。
気味悪いかもしれないが、怖がらないでくれ』

『あなただったんですか?ごめんなさい。あんまり恐ろしい姿だったもので』

『それはいい。とにかく助ける』

 私は7kgのウルムヤンデを振りかざすと鉄のドアを叩き飛ばした。
中にいた男たちは武装していて、私の侵入に驚いたがすぐ臨戦態勢に入った。

 ヒゲ面で鎧兜の大男が長剣を振るって斬りかかってきた。
私はウルムヤンデを横に払って弾き飛ばした。
そして剣を飛ばされて手首を押さえた男を足で蹴飛ばした。
男は10mほど後方に飛んだ。
途中にいた男たち3人を巻き添えにして重なって壁にぶつかって行った。

「なんだ。この化け物は?」「確か闘技場にいた奴だ」

 まだ男は8人ほどいた。私は小部屋を探すために真っ直ぐ歩いた。

『奥の部屋か?』

『そうです。黄色いドアの部屋です』

 私は突き当たりに黄色いドアを見つけて真っ直ぐ歩いて行った。3人の男が正面と左右から斬りかかって来た。
だが正面の男は縦に真っ二つになった。
左右の男はそれぞれ左右の壁までぶつかって行った。
正面の男は急に生えてきた3本目の手に持っていた神の刀で斬られたのだ。
右の男はウルムヤンデで、左の男はカッディアンでそれぞれ叩き飛ばされたのだ。

 私の6つの目が開いた。背後から左右から正面から男達がまた襲って来る。
だが私は歩くスピードを落とさない。
歩きながら3つの武器を振り回した。
2秒で4人の男達が叩き飛ばされたり、真っ二つにされたりした。
残りの一人は腰を抜かして戦闘不能になっていたので構わずにおいた。
黄色いドアを蹴飛ばして壊すと、アニョンが床に座っていた。
私はゲーマーボンドのプログラムを解除してあげた。

「案内場の入り口まで送ってやる。
あんたの後をつけたのは途中で襲われないか心配だったんだ。
1250ポイントも貰ったからな」

 アニョンは私のポイントを見て驚いた。

「55670ポイントになってます。あなたこそ大丈夫ですか」

「あ、これか。今こいつらを倒したからな。また少し増えたみたいだ。
そうだ。この増えた分をやろう。25670ポイントだ」

 私は自分の増えた分のポイントをアニョンに移動させた。

「えっ、こ……こんなに? どうしてですか?」

「もう闘技場で戦うのをやめろ。
それだけあればしばらくは危険なことをしなくても済むだろう」

「は……はい。でもどうしてですか?」

「怖い思いをさせられたんだろう?
だからこいつらから取ったポイントをあんたにやる。
それだけだ。いらないなら、今返せ」

「いえいえいえ。有難く頂きます。ありがとうございます」

「じゃあ、行くぞ」

「ちょっと待って下さい。別の部屋にも誰かいたような気がします」

 アニョンは他の部屋のドアに耳を当ててからドアを開けようとした。
だが開かない。そういう部屋が幾つもあった。
私はドアを片っ端から蹴飛ばしてやった。
するとゲーマーボンドをつけられたらしい少女たちがいた。
各部屋に一人ずつ合計5人の少女が監禁されていたのだ。
少女というのがわかったのは透視で見えたからだ。
彼らのアバターは女性だということが分からない姿形の者もいるのに何故少女たちばかりなのかと思った。
つまり電子生物が関係していたのだ。
電子生物でない限りアバターの中に潜むゲーマーを透視することができないはずだ。
しかもかなり高度な電脳技術の知識を持っている者でなければ……。

 その辺のことを探るために、私は最初の入り口の部屋に戻って一人だけ生き残った男を捜した。
だが逃げ出した後だった。


「私達は人身売買団に捕まっていたのです。
もう少しのところで出荷されるところでした」

 少女の一人は私に感謝しながらそう言った。

 彼女達は生命点がほんの僅かだけで後は奪われていたので、私のを分けてやろうとしたが、アニョンが自分が貰った分から1000ポイントずつ分けてあげていた。
アニョンにしては5000点も気前がいいことだった。

 私は案内所まで彼女らを連れて行くと、そこで別れることにした。
アニョンは立ち去る私に心で話しかけた。

『おじさんの名前は?』

 私は考えた。そういえばこのアバターに名前がない。
そこでその場で思いついた名前を言った。

『アシュラ』

『アシュラね。また会えるかな』

『たぶん……じゃあ』

『じゃあ、また』

 マチモリのテレパシー能力は互いに伝えようと念じたことしか伝わらないので、私も正体がばれずにすんだのだ。
 


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