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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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クルッチル・クース-1

 私は闘技場の方に行った。
戦いに行くのではなく様子を見に行く為だ。

 闘技場はコロッセウムを想像していたが、割と近代的なビルで、屋内に何箇所か戦うスペースの部屋があった。
 1部屋は普通の学校の体育館くらいで、そういうのが各階に4つくらいずつあって、真ん中に金網のような仕切りがあって、そこで戦うらしい。

 周りには勝負を賭ける人々がいて、それで生命点を稼ぐ者や失う者が出るわけだ。
私はしばらく見学することにした。

 最初に対戦相手の龍が紹介される。500ポイントの大型龍もいれば、50ポイントくらいの小型龍もいる。
それに挑戦する者を募集するのだ。
複数が名乗りをあげたら観客の拍手の多い者が挑戦権を得る。
そして掛け率を胴元が決めて賭けポイントを集める。
勝負が決まったら、勝者に賭けた者に配当金を渡す。
胴元には幾らかの手数料が入る。そういう仕組みだ。

 龍が斃される場合もあれば、アバターが斃される場合もある。
アバターが負けそうなときはギブアップすれば龍の動きが止まる。
間に合わなければ生命点がゼロになり一瞬ゲーマーの姿が見られることになる。
だから負けそうになったらギブアップして何パーセントか生命点を支払う場合が多い。

 そのうち体重80キロの真っ黒な龍が紹介された。
1m90cmくらいの体長だが筋肉がしっかりしていて、顎が強そうだ。
シャン・シーターという龍だそうだ。ポイントは250ポイントだという。

 するとクルッチル・クースと言う名前の剣闘士が名乗りをあげた。
人気があるらしく観客が拍手したので、他の者は名乗り出なかった。
私はその剣闘士を透視した。
何故なら決まったとき、両手を広げて体を左右に揺らして喜んでみせたからだ。
しかも兜からはみ出た長い髪で女性だとわかる。
透視するとやはりゲーマーはアニョンだった。

 以前戦った相手もうまく急所を刺したから良かったが、今度もうまく行くのだろうか?前のよりも1ランク上の相手だ。

 だが賭けが始まった。胴元はシビアでアニョンが勝つとは思っていないらしくて掛け率を5倍にした。
つまりアニョンが勝てば賭けた者は掛け金の5倍の配当金が貰えるということだ。

 勝負が始まった。黒い小型龍は狡猾な動きをした。
軽い剣だということを見越していきなりジャンプして自分の胴体をぶつけたのだ。
もちろん剣で斬りつけたが固い胴の鱗は刃が通らない。
800g程度の軽い剣で敵う相手ではないのだ。
 
 真っ黒いシャン・シーターの80kgの体に体当たりされると、アニョンは尻餅をついてしまった。

 着地したシャン・シーターは尻餅をついたアニョンに飛びかかろうとする。
ここでギブ・アップしなければ危ない。だが私は心の中で念じた。

『口を刺せ』

 そのときアニョンは飛びかってくるシャン・シーターの大きく開けた口にカウンターで剣を串刺しにした。
剣は後頭部に突き抜けて鍔ガ口元で止まった。
シャン・シーターは剣に貫かれたままアニョンに覆いかぶさるように倒れた。
アニョンは下敷きになりながらガッツ・ポーズをして見せた。
観衆は大番狂わせに沸いた。

 アニョンはシャン・シーターの生命点の5倍のファイトマネーをもらうということで、1250ポイントも貰っていた。

 彼女は早速換金しようと案内所の方に急いだ。
私は心配になって少し離れて後をつけた。だがそれがいけなかった。
私に気づいたアニョンは自分を襲う強盗だと勘違いして逃げ出したのだ。
彼女は大通りから路地に入った。そのとき悲鳴が聞こえた。

 私が路地に行くとちょうどアニョンが数人の男達に押さえられ建物の中に引きずり込まれるところだった。


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