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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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アニョンの王子さま-2

「けれども、皆様方に関していえばインプラント共振を防止する措置はとっておりません。
 
 ですから、ご安心下さい。何度も極楽を味わっているうちに、ゲーマーのご本体が衰弱して絶命すると思います。

 そのときには完全にこのプログラムは終わると思いますのでそれまでのご辛抱です。
しばらくお待ち下さい」

 これには悲鳴があちこちから上がった。ボーイは続けた。

「けれどもいくらたっても絶命されない方がお1人だけいらっしゃいます。

 こちらの方でございます。ファーザー・コユナさまでございます。

 この方にはゲーマーが存在しません。固定型電子生物であられるからです。
実は私の役割は今まで述べたプレゼンテーターの他にもう一つの役割があります。
それは外部の侵入を手引きするという重要な役割です」

 そういうとボーイの体から2人の人間が出て来た。
ハヤテとカリアだ。それを見てファーザー・コユナは地面に転げながら叫んだ。

「きさまら!バックアップを取っていたのか?!」

 カリアはファーザー・コユナに素早く近づくと、その体に潜り込んだ。

「うおう!」

 ファーザー・コユナが叫ぶとカリアは飛び出した。
そしてまたボーイの体に3人が潜り込んで消えた。
ボーイは大きな声で言う。

「私は単なる手引きの通り道。ご安心下さい。

 今ファーザー・コユナさまは体の中の爆縮装置を作動されましたが、私も最後までご一緒します」


 すると見る見るうちにファーザー・コユナの体は縮み始めた。
縮んで最後は点になり、今度はその点に周りの風景が呑み込まれ始めた。
ボーイは喋り続ける。

「もちろん、今いる他の皆さんも吸い込まれます。
吸い込まれて点になります。
けれどもゼロにはなりません。

 だから皆さんのアバターはこの点の中に存在し続けるので、皆さんは永遠にこの点の中に限定的オンラインをし続けるということになるのです。
オフしようにもこのエンドレスのプログラムが続く限り……」

 そしてファーザー・コユナに関するデーターと彼の裏組織の全てが点になって凍結した。
 
 現実世界では組織の一員だった者は皆極度の自閉症の症状で身動きもしない状態になっていた。
彼らは全員隔離施設に運ばれた。
 
 スーパー・コンピューターとしてのファーザー・コユナは一桁の四則計算もできなくなり、ただ無駄に電力を使っているということで、電源を切られた。

 その後ガルチック・コユナ社の本社は実質上倒産し、リアル・ゲームの実際的運営をしていた下請け企業が連盟を作り事業を継続することになった。

 ファーザー・コユナの前には銃弾で蜂の巣になったハヤテの遺体があったが、それは隠密裏に処理された。






 アニョンは黒目がちの小さな目をくるりと廻して言った。

「ねえ、どうしてこのDゲームの中では、私はアニョンのままなの?」

 すると相手の王子さまは言った。

「それはこのゲームが君の為だけに作り直されているからさ」

「王子さまとはどこかで会ったことがあるよね。どこでだったっけ?」

 王子さまは笑って言った。

「言ったでしょう。このゲームを続けていればハヤテのアバターに会えるって。
僕はハヤテの若い頃の姿そのままだよ。やっと会えたね」

 アニョンは慌てた。

「えっ、じゃあ……あなたがハヤテ? 
どうしよう?
もしかしてセックスすることになるの?」

「それは大丈夫これは君のゲームだから。
でももし君が望むなら、望んだ所まで僕もOKだよ。
どうする?
キスまでにする……それとも」


 王子さまは、ハヤテが残して行った、もう一つのコピーだった。

           (完)  


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