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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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ブラックリスト-1

 私はその足で龍の谷へ行った。
龍の谷の龍は総てリアル・ゲームの会社ガルチック・コユナ社が作った電子怪獣である。これらを斃すことにより、生命点のポイントがゲットできて、換金できる。
 
 だが、逆に斃されると生命点が取られ、新しく生命点をもらうためにお金を払わなければいけない。

 総合的に考えると営利を追求する企業だから、ゲーマーの方が損をするように出来ているに違いない。

 リアル・ゲームには入会金の他に住民税のような徴収もある。
何もしなくても一定の期間が過ぎればポイントを削られるのである。
そうすると、なんとか戦って龍やモンスターを斃そうとする。
だが逆に斃されてお金を失う。そういうゲームなのだ。

 もっとも、このリアルゲームは戦いだけのゲームではない。
宝探しもあるし、謎解きもある。
ギャンブルもあるし、商店街、娯楽施設、風俗まである。
あまりにも膨大な利益があるので、民営と官営が入り混じっているのだ。
 政府の要人にガルチック・コユナ社の重役が入り込んでいるところからも、それがうかがえる。

 私は重さ1トン級のヤムヤングクとかウベクルダという龍をタンムラヌン・ゴルジェという重さ5kgの刀で襲った。
 
 猛然とこれらの龍は私に襲って来たが、前足を出したら前足を切り落とし、噛み付こうとしたら頭を切り落とした。

 龍の谷の龍たちの攻撃パターンは分かりやすくできていて、一頭が斃されると次々に仲間が集まって来て、数で押して来ようとする。
 私はこちらから迎え撃つように、飛び上がって飛び降りざまに斬り下ろす攻撃をした。途中で刀を使うのを止めて、ウルムヤンデという7kgの鉄の棍棒で殴る方法もとった。気がついたときにはヤムヤングクが13頭、ウベクルダが16頭を斃していた。
両方とも500ポイントなので14500ポイントになった。

 そのとき重さ2トン体長5mの鋭い爪の龍パンシルベが現れた。
 前足の爪が30cmもあり、その爪で掴めば太い樹木も簡単に抜いてしまうほどの強い力があるという。
この龍は獰猛で人間を一掴みで引き裂いてしまう。
だが勝負は一瞬で決まった。
私を掴もうと出した前足をウルムヤンデで叩き潰したのだ。
悲鳴をあげて怯んだパンシルベを私は飛び上がりざま、頭部を殴った。
その一発でパンシルベの頭は砕けた。
このとき5000ポイントが追加された。
合計19500ポイントだ。そのとき龍の谷の景色が消えた。

そして闇の中から背広を着た中年の男が現れた。

「あのう、すみません。もうこれで勘弁してくれませんか?」

 私は相手がガルチック・コユナ社の人間だと思った。
損失が大きいので、いわゆる打ち止めにする積りなのだ。

「だが、まだ重さ2,5トン体長7mの牙の龍のディッシルベとかは出ていないし、伝説の最大の龍アリーブ・エジデレハとも対戦していない」

「在庫がないのです。だから当分ここには来ないでもらえませんか?」

「電子怪獣が在庫がないなんておかしいだろう。幾らでも再生できるはずなのに」

 私がそれを指摘すると態度を変えた。

「私の方であなたの正体を調べてリアル・ゲームそのものをできないような行政措置を要請することもできるのですよ。
 
 あなたがこれだけ強いのには何か仕掛けがあるかもしれませんし、それが違法な手段である可能性もあるのです。
ですからここは平和的にいきませんか?こうしましょう。
 
 龍の谷にさえ今後来ないという確約を頂ければ、ちょっとお見舞い金を包ませてもらいます。」

 男は19600ポイントの私の生命点を何かの器具を使って30000ポイントにした。 
私はここで引き下がった方が利口だと思った。
相手は絶対権力を持っている行政側と通じているからだ。

「わかりました。でも違うところには行けるんですよね。闘技場とか……」

 男は愛想が良くなった。私が話がわかる男だと思ったからだ。

「一応戦いの場所は巨人の森とか闘技場とかさまざまありますが、そっちの方は私の管轄じゃないのでね。
でも一応ご忠告しておきますが、勝ちすぎないことです。
それをやるとブラックリストに載りますから。
そうですね、一日に10000ポイント未満に押さえて週1くらいなら目をつけられません。
週2でも3回に1回はわざとちょっと負けて逃げるとかすると大丈夫です。
ブラックリストに載ると競技ができないので、違法なことに手を染めてしまうことになりますから」

 そういうと男は姿を消した。
 そして辺りの景色は龍の谷に戻っていたが、大きな翼竜が私の傍を飛んでいたが、私が見えないがごとく無視して行ってしまった。
またヤムヤングクの群れが歩いていたが、私には無関心に通り過ぎて行った。
もう私は攻撃しないようにプログラムされたらしい。
つまりここのブラック・リストに載ったのだ。

 


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