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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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武器店-1

 私はリアル・ゲームの案内所に行った。
もちろんオンラインだ。そこは換金もするし、各種案内もする。
武器屋を紹介してもらおうと思って行ったのだ。
 換金したときもそうだが、小さな穴みたいのがあって、そこから声が聞こえるので顔はお互い見えない。
  私が案内所に入ると、他の客は逃げ出した。昨日換金するときもそうだった。

「武器屋を教えて欲しいんだが」

 すると中からパンフレットが無言で出て来た。
 幾つか店が紹介されていたが、その中のひとつを指さすと、パンフレットが鳥の姿になって羽ばたき始めた。
私はその後を追いかけることにした。

 案内所の裏側は商店街になっていて、そのうちの一軒の前で鳥はパンフレットに戻って私の手の中に落ちて来た。
 私が店に入って行くと客は逃げ出し、店主らしき男が槍を構えて追い出そうとした。私は牽制に突き出された槍の柄を掴んで奪い取った。

「武器を買いに来たんだ。客に失礼じゃないか」

そう言って槍を戻してやると、店主は頭を下げた。

「すみません。私はアバターの店主なもので、お客さんがアバターだとはわからなかったもので……」

「モンスターだと思ったのか?
ちょっと調整が悪くてアバターはこんな姿をしているが、普通のゲーマーだ。
龍を倒す武器が欲しいんだが、良いのがないかね。」

「どのくらいの龍ですか?」

「最大級の龍だ」

 店主は口を大きく開けた。だが、気を取り直したように奥に案内してくれた。

「剣は大体800gから1kgの重さが普通です。
 けれども龍を切るとなると体重60キロのアオジェっていう小型龍なら1,2kgから1,5kgの剣を使うと鱗を断ち切って斃せます。
女性用の1kg未満の剣なら急所を上手に刺すのでないかぎり、無理ですね。
 さて、今度は重さ1トン級の大型龍の場合ですね。
 ヤムヤングクとかウベクルダという頑丈な龍は2kg以上の重さでないと斬れないといいます。
使いこなすのは男性でも強力の者でないと扱えません。
 で、通常のアバターが扱う龍はこれが限界だと言われてます。
でもお客様は最大級の龍を倒すと言われました。
たまにそういう酔狂なことを言うお客様のために用意している物があります。
こちらをご覧ください。」

 するとそこには見るからに大きな剣が数本飾ってあった。

「重さ2トン体長5mの鋭い爪の龍パンシルベとか重さ2,5トン体長7mの牙の龍のディッシルベとかは危険なので闘技場でも扱いません。
これを斃す剣は並みの剣ではありません。
勇者の剣ともいうべきでバリアンツ・グルチュという名前までついてます。
持つだけでも3kgあります。
振り回すのはとても……。なんでしたら、お客さん手に取って見て下さい。」


 私はそれを片手に持って軽く振ってみた。竹の棒を振っているように軽かった。
店主はその様子を見て顔を蒼くした。

「わかりました。
このリアル・ゲームに出て来る最大の龍はアリーブ・エジデレハという龍です。
誰も見たことがありません。大きさもわかりません。
それを斃すのに何が向いているかわかりません。
 ただ、リアル・ゲームの製作者と言われた人がその龍を倒すとしたらこの剣しかないだろうと言って、作った剣があります。
 神の刀と言われてます。重さは5kgもあります。
重すぎて手で砥ぐこともできません。だから錆びています。
錆びは落とせますが砥ぐとなったら機械で研ぎます。手に持ってみて下さい」 

 言われてそちらを見ると、マサカリかギロチンのような刃の剣があった。
手に取るとずっしり重い。だが両手に持って振ると振ることができた。
店主は驚いていた。だが負けず嫌いの性格らしい。
奥に飾ってあった巨大な骨を持って来た。
それを支え台の上に水平に置くと挑戦的な口調で言った。

「振り回すことができても、その剣でこの太い龍の骨を一振りで斬ることができなければ、その剣は扱えません。
この骨はアリーブ・エジデレハの足の骨だと言われてます。
できますか? できなければ……」

店主が言い終わらないうちに私は、その神の刀を振り下ろした。
骨とそれを支えていた台も真っ二つに斬れた。店主は腰を抜かして尻餅をついた。

「も……持って行って下さい。お代はいりません。
その代わり自分で錆を落として下さい」

 私は柄のところのボタンを押した。
剣は消えてポケットサイズのライターほどの大きさになった。それをポケットに入れると店主に聞いた。

「この刀には名前があるのかい?」

「あります。タンムラヌン・ゴルジェといいます。舌を噛みそうな名前ですが」

「ありがとう。ただは嫌だから、100タルト置いて行くよ」

 私はお金を置いた。すると店主は追いかけて来た。

「待って下さい。他にも持って行ってもらいたいものがあるんです。
どうしょうもなくて行き先に困っている物が……」

 結局私は更に100タルト出してカッディアンという角のような出っ張りがついた鉄製の6kgの棍棒とウルムヤンデという撲殺用の鉄棍棒7kgを引き取らされた。

それらは電子武器なので普段は小さくしてポケットに入れている。
店主は楯と鎧も勧めたが、面倒なので断った。


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