弱虫-1
ジュンは格技館前のベンチで昼食を食べ終わると、格技館一階の剣道場で汗を流す、昼に剣道場に来るのはジュンだけで、ジュンの掛け声が寂しく響く。
昼の練習が終わるのは、5時限目の予鈴と共に終わる。
急いで片付けをし、教室に戻る。だが、廊下で会いたくない人に会ってしまった。
ジュンの心は震えた。
そう、槙野真琴だ。彼女は理科の教科書を持ち、一人、理科室に向かっていた。
真琴はジュンの方へ歩いてくる。理科室はジュンの後方にあるのだ。ジュンは赤面し、真琴の顔を真面に見れず、俯く。足取りも止まり、立ち止まる。
真琴は無表情で、ジュンに近付く。
ジュンは自分の情けなさに怒りを覚えるが、体が動かない。心臓だけが猛烈な高鳴りをしているのがジュンを苛立たせる。
そんなジュンに、真琴は彼の前で立ち止まり、クスクスと笑い言った。
「動揺しすぎ、私がそんなに怖い?」
ジュンの心が酷く傷付く、自分の弱さをまともに言われたような気がしたのだ。ジュンは叫ぶように、
「ごめんなさい!」
そう言うと、真琴から走って逃げ出した。
真琴は逃げだすジュンを見詰め、小さく呟いた。
「私の馬鹿……」