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あまこい
【学園物 官能小説】

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さざ波-4

 その日から佳奈は毎日のようにジュンの家に来るようになった。
ジュンは停学してから買ってもらった家庭用テレビゲームに夢中になり、自主勉強以外はゲームをしている生活をしていた。

「ジュンちゃんまたゲームしてるの?」

佳奈がリビングに入ると、ジュンは何も言わずテレビに向かっていた。

「タマお姉ちゃんとおばさん居ないみたいだけと」

「二人で買物」

「そう、ジュンちゃんは行かないの?」

「停学中は外出禁止だから」

「なにそれ、真面目ねジュンちゃんは」

「佳奈もやる?」

ジュンはようやく佳奈に目を向けると、もう一つあるゲーム機のコントローラを佳奈に向けた。

「やって良いの?」

「これ二人プレイ出来るから」

「うん」

佳奈はジュンの隣に座るとコントローラを手にし、ゲームを始めた。

「ねぇ、停学の事でおばさんジュンちゃんに怒ってない?」

佳奈はゲームをしながらジュンに言う、ジュンはテレビに視線を向けながら言った。

「怒られたよ、凄く」

「そう……でもよく買ってくれたね

「何を?」

「このゲーム」

「ああ、そうだね、一度やってみたかったから、頼んだら買ってくれたよ」

「おばさん優しいのね」

「うん……」

ジュンの冴えない返事に佳奈はジュンに目線を向けた。

「どうしたのジュンちゃん」

「いや、こんなの買ってもらって大丈夫なのかなって」

「大丈夫?」

「こんなの買ってもらったことなかったから、少し不安になるんだよ、買ってもらて良かったのかなって」

「でも、ゲームはやるんだ」

「やらなきゃゲーム買ってもらった意味ないだろ」

「なにそれ、気まずいけど買ってもらったからやってるってこと?」

「やらないと、買ってもらった母さんに悪いだろ」

「それだったら最初から買ってって言わなきゃ良いじゃない」

「その時はやりたかったけど……」

ジュンはコントローラの手を止めた。

「買ってもらって気持ちが変わった?」

「うん」

「よく分からないな、ジュンちゃんは、そんなこと気にしなくて良いと思うけど」

「僕もそう思う……」

「ジュンちゃんってさ、本当に楽しい事って体験したことないんじゃない?」

「どういうこと?」

「楽しい事があっても色々人に気を使っちゃって楽しめないんじゃない?」

「楽しむ……」

ジュンは俯いた。

「ジュンちゃんは色々考えし過ぎなんだよ、人のことばっかり考えるのはあまり人の為にならないよ」

「ためにならない?」

佳奈は顔を赤くしながら言いづらそうに言った。

「うん、私はジュンちゃんが……好きだから、例えば私の事を考えて悩んで悩んで、苦しんでるの、私は辛い
私はジュンちゃんに楽しんでもらいたい、好きな人にはずっと楽しんで幸せになってもらいたい。
他の人も同じだと思う、あまり考えないでって」

ジュンは佳奈に目線を向けると、

「ありがとう、なんか気が軽くなったよ」

と言いながら笑みを浮かべた。

「うん」

ジュンはまたゲームに戻った。
佳奈は肩の力が抜けた。
告白に近い好きをジュンに伝えたのに、ジュンは好きの意味を勘違いしていた。佳奈は心の中で、ジュンのバカと呟いたが、ジュンはやっぱりジュンだと、ジュンの事が好きで良かったと、その横顔を見ながら思った。

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    -つづく-


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