THANK YOU!!-1
委員会が決まり・・最高学年として始まった4月が終わり。
季節は梅雨に変わっていた。
ジメジメして湿気が溜まり、雨のために外で遊ぶことができなくなってしまう季節。
みんなのストレスも貯まる季節でもあった。
「ふう・・暑い・・」
窓際の席で机に伏せているのは瑞稀。
一応窓は開けているのだが、教室の湿気に勝てるわけもなく、風は気持ちいいと言える物でなかった。
その様子を見た秋乃は小さく笑った。
この二人の仲も、一ヶ月の間に親友と呼べるほど縮まっていた。
「もうちょっと我慢しなよ。そしたら、雨止むだろうから」
「うー・・秋乃がそう言うなら、止むんだろうけどさ。」
口を尖らせた瑞稀に、しょうがないなと思いつつ、机の中にしまっていた下敷きで風を送る。
それが、冷たくて気持ちよかった。
「わー。気持ちいー!秋乃、ありがとー!」
「いーえ。瑞稀に鬱陶しくされても困るし。」
「・・一言多いよ。」
涼みながらも、イヤミを返す瑞稀。
視線を横にずらすと、拓斗と談笑している菜美の姿が目に入った。
「・・っ・・」
菜美から受ける少し恨みのこもった視線のせいで、もう自分から話しかけに行くことがなくなった瑞稀。
最近は、拓斗も菜美から離れることが出来ずに、二人で話すことは少なくなっていた。
瑞稀は二人から目線をずらした。
その親友の様子に気づいた秋乃は、チラッと菜美の方を向いてから瑞稀に言った。
「・・いや?あの、菜美って子と鈴乃が話しているのを見るの。」
「・・え?」
瑞稀は思わず反応してしまった。
タイミングよく聞かれてしまった為と、図星な事も災いした。
「まぁ、好きな奴がほかの女子と話してれば誰でもそうか。
特に、あの菜美って子は毎回のように変な視線を向けてきたからね」
そう言った秋乃に、視線を気づいていた事に驚いた瑞稀だったが、前半の言葉を理解するとガタッと椅子が強い音がするくらい、凄い勢いで体を起こした。
「ちょ、ちょっと、待って!好きな奴って何!?」
「あれ?瑞稀、鈴乃が好きなんじゃないの?」
顔を赤くした瑞稀の向かいで、本気でそう思っていた秋乃は首を傾げた。
瑞稀は慌てて言う。
「そ、そんなわけないじゃん!何でそんな話になんの!」
「だって、明らかに凄い仲いいし。お互いを気にかけてる感じするし」
秋乃が言葉を続けるたびに、瑞稀の顔はますます赤くなっていた。
それをほかのクラスメイトに見つからないように、慌てて座り、顔を隠す。
と、言っても腕を頬に当ててるだけなので実際はそこまで隠れてはいない。
「・・違うの?」
「違うよ。アイツは・・友達。うん、友達だよ」
そう言った瑞稀は、何故か自分の心に引っかかるモノを感じた。
それは、もう一度繰り返した言葉に更に反応した。
「・・(なんだろ・・)」
そう思ったところで、昼休みが終わり、国語の教師が入ってきた。
引っかかったモノを不思議に思ったが、深く気にしないことにした。