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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3


雑用をやらされた瑞稀は、疲れた表情をしつつ、教室の扉を開けた。
すると、そこには思いがけない人物が居た。

「・・!なんで・・」
「お疲れさん。」

自分の机にランドセルを背負ったまま座り、瑞稀に向かって片手を上げた人物。
瑞稀は、その人物の名を呼ぶのは久しぶりだった。

「・・鈴乃・・・」

待ってくれていたのは拓斗だった。
拓斗は体制は変わらず、上げた手を下ろすと微笑みを見せた。
一方、瑞稀は教室の入口で止まったまま。
驚きが隠せなかった。
そんな様子に気づいた拓斗は笑いながらも、「入れよ」と勧めた。
瑞稀は、その言葉で自分の席に置いたままにしたランドセルを手にとった。
その隣まで歩いた拓斗は表情は優しいまま、口を開いた。

「なんか、ちゃんと二人で話すの・・久しぶりだな」

その言葉におどろいた瑞稀はバッっと顔を上げ、拓斗を見た。
拓斗の表情は優しいままだったが、少し、悲しんでいるように見えた・・。
のは、瑞稀の気のせいじゃない。

「・・うん、そう、だね。・・でも、どうして鈴乃が?」

頷いた瑞稀だったが、どうしても、この疑問は解決させたくて聞いた。
拓斗は小さく笑った。

「柊が、言いに来たんだよ。掃除ん時。お前が、一人で残ること。」
「・・秋乃が・・?何でまた・・」
「・・・俺達が、ちゃんと会話してないの見ないと落ち着かないんだと。
 それだったら、今も見てればいいのに帰ったし。」

その言葉で、瑞稀は気づいた。
秋乃は、自分に気を使ってくれたことに。
最近拓斗と話せていないことをココロのどこかで悲しんでいた瑞稀に一番早く気づいた秋乃は、なんとかしようとしてくれたんだろう。
そんな時に、瑞稀一人だけが残ることになったのはキセキだった。
これを利用しない手は無い、と思ったんだろう。

そこまで、理解した瑞稀は目に涙が溜まった。
感謝の気持ちでいっぱいだった。

「・・鈴乃。最近、話かけに行けなくてゴメン。あ、気にしてなかったかな」
「え?・・あ、いや・・お前、何かあったのかなって思ったから。気にはなってた。
 それに、いつものお前らしくなかったし。」
「大丈夫。明日から、話し掛けに行く。秋乃の為にも・・自分の為にも。」

そう言い切った瑞稀は、ここ最近の弱った表情が嘘のように晴れ晴れしていた。
自分が、強い視線に負けてしまった事を後悔した。
自分には、心配してくれる友達がいることに感謝した。

そんな瑞稀を見て、拓斗は心から安心した。
やっと、自分の知っている瑞稀に戻ったからでもあり・・。
そこまで考えた拓斗は、続きが照れくさくなり、それを隠すように瑞稀の頭をなるべく強くならないように優しく撫でた。
その体温を久々に感じれた瑞稀は、笑顔になった。





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