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眠れない妻たちの春物語
【SM 官能小説】

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眠れない妻たちの春物語(第二話)-4

タシロのからだに、初めて振り下ろした鞭の音が、ふと写真の中から残響音のように漂ってくる。
彼と初めてプレイしたとき、魅了されていったのは、むしろ私の方だった。

彼の苦しげな息づかいが、写真の中から聞こえたとき、私は、ケンジに感じたことのない懐かし
い性の疼きに、全身が深くひたされるような気がした。



あのとき…

ケンジにプロポーズされながらも、タシロと離れられない私はずっと迷っていた…。迷いながら
も私はケンジに抱かれ、タシロに鞭を振り上げた。

…欲しいでしょう…この鞭を…だから、あなたは私から離れられない…そして、私もあなたから
離れられない…あなただけから得られるものを、私はけっして失いたくないの…

その私の言葉に、媚びるようなタシロの瞳は、私が嫉妬するくらい従順で澄みきっている。私は
彼の頬を掌でゆっくりと包むと、彼の湿った唇に接吻をした。そして、黒い一本鞭を手にした。


蜜色の仄かな灯りが、床に蹲ったタシロの滑らかな背中を淡く浮かび上がらせている。私はゆっ
くりと鞭を振り上げた。


ビシッ… あうっー… 

弾ける鞭の音…しなる鞭を背中に受けたタシロは、象牙色の裸体を悩ましげに弓なりにのけ反ら
せ、甘い吐息のような嗚咽を洩らす…。

ビシッー、ビシッ…

タシロの背中を鞭で連打しながら、私はいったい何を考えていたのだろう…。
ケンジとつき合い、タシロとプレイを重ねながらも、あのときの私は孤独だった。求めて続けて
もたどり着かないタシロの温もりが切ないほどに欲しかったのだ。


私は鞭を放り出し、仰向けになった彼のからだの上に跨り、硬すぎるほど屹立したタシロの濡れ
たペニスを私の中に含んだ。彼のものが、子宮を突き上げるくらいどこまでも深く私の中を充た
していった。

そして、私は自分でも気がつかないうちに、彼の首を両手で少しずつ絞めていった…。
恍惚としてもの悲しげな眩惑に包まれたタシロの瞳は、苦しげでありながらどこまでも優しく私
をじっと見ていた。

そのとき、どこからか聞こえてきた瑞々しいピアノの音が、私を深く抱擁するようにからだの中
に木霊した。


愛している… タシロも、私も、お互いにそう言えなかった。

いや…そういう言葉が、私たちの関係には無意味であることをお互いが知りつくしていたのかも
しれない。ただ、ふたりの心や肌が、吸いつくように絡み、香しい欲情に駆りたてられるように
堕ちていく、冷ややかでとらえどころのない関係こそがすべてだった。

そして、けっして終わりのない関係… そんな関係は存在しないのだ…。




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