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凶眼
【制服 官能小説】

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〜第4章〜 土曜日 魔鈴-3

 こうして僕は、聖書で滅ぼされた悪徳の都へ連れ込まれた。

 店内に入ると、甘ったるい香りが鼻をつく。香が焚かれてるのだろうか、妖しげな紫煙が漂い、危険な巣窟に踏み込んだことを意識させる。
 どこか古代の宮殿を思わせる内装だが、そこかしこの調度類がいずれも高価なものであることはわかる。抑えられた照明とあちこちで仕切られたカーテンのおかげで、店の広さはわからない。
 僕は薄紫のカーテンで区切られたブースに案内された。何もかも初めてな体験だが、ようやく見知った顔に出会えて、ちょっとだけ安堵をおぼえた。
 最初会った時は路地裏の妖しい占い師だったが、僕に凶眼を渡した彼女は、紫のイブニングドレスを上品に着こなし、嫣然と微笑みかけてくる。
 野暮ったいローブ姿は仮の姿だったのだろう。抜けるような白い肌の、驚くほどの美女である。
 今まで僕が抱いた女の子達とは異なる、大人の魅力に溢れた女性だ。どうして最初に会った時は気付かなかったのだろう。向かいのソファに腰を下ろし、胸の中で独りごちる。
 てっきり両脇に座るものと思っていたが、僕を案内したブロンドの悪魔達は、別れ際に両頬にキスを残し店の奥へと去って行った。何事か占い師と言葉を交わしたのは、飲み物の手配らしい。
 彼女に会ったら、単刀直入に、凶眼を手に入れる方法を聞くつもりだった。だが、すこぶるつきの美女を前にすると、少しでも長く話していたいと言う欲望に駆られる。最初に口をついたのは、実はどうでもいい内容だった。
 「さっきの二人、双子?」
 僕の心を見透かしたように、占い師はクスリと笑う。
 「そうよ、赤いドレスの子がリスティア、青い方がレスティアよ」
 初めて出会ったとき僕の心を魅了した声。プリティホワイトのルシールちゃんを連想させる、鈴を転がすような美声が、再び僕の心を捕える。
 「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はゼノビアよ」
 僕は彼女の名前すら知らなかったことに驚いた。
 「それで、ここは何なわけ?と言うか、あんた何者?」
 ある意味これは核心をついた質問だったのだろう。彼女は少し思案気な顔になる。何処まで話してよいか、そう考えてるように見える。
 「そうね‥、まずここは私が経営するお店よ。だけど、それは別に重要な所じゃないわ」
 高級クラブが大事じゃないなら、余程の金持ちなんだろうか。
 「それと私が何者かは、まだ秘密。今は案内人と思ってくれればいいわ、でも‥」
 そう言って謎めいた微笑を浮かべる。次の言葉は囁きに近かった。
 「貴方が凶眼に選ばれれば、おのずとわかることよ」
 そう、僕が聞きたかったのはそれだ。
 だが、次の語を放つ前に、カーテンの向こうから女が現れ、僕は息を呑んだ。


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