第3章-1-1
『んんっっはぁっあああああっ…』
家具らしきものの何もない和室で、両膝裏に通された縄が項を通って固定され、両足首と両手首が縄で縛り付けられ、木偶人形のようにされた早希は今日も弟に犯されている。拉致されてから7日目の夜だった。
慧次郎は必死に腰を打ち込んでくる。長大なそのものは凶悪なまでに硬い。張ったエラに何度も擦り上げられるうちに早希の膣粘膜はすっかり敏感になってしまった。しかも無意識に快楽を貪ろうとする余り、早希は知らぬ間に下腹部のさまざまな筋肉の使い方を心得てしまい、一晩に何度も逝くようになっていた。
『んんんんんんんっ!!!』白い下腹をびくびく痙攣させ、慧次郎のものを締め付けながら呆気なく逝ってしまう。
前戯など何もない。自分も縛られて慧次郎に触れられないが、慧次郎も自分に触れて来ようとはしない。彼は一族の中心人物の一人である自分に子供を孕ませることだけが目的なのだ。でも、なのに…辛くない。それは膣に事前に注入される多すぎるほどのローションゆえだけとは思えなかった。早希は自覚していた。慧次郎との交接が、自分は厭ではない。彼に抱かれることが厭ではないのだ。
元よりこの子を嫌いになることなどできない―。
見上げると射精感を堪える慧次郎の切なげな表情に早希は胸が締め付けられる。慧次郎が自分で感じている―。
『あ…ん…ああっはぁぁぁっ…』
喘ぎながら早希は心の中で慧次郎を抱きしめていた。
慧次郎の強い抽挿に感じながら、だが早希の頭のある部分は冷静だった。この子は本当に自分の事が嫌いなのだろうか。好きでもない女にこんなに勃つものなのか。そうした性癖の男もいるだろう。けれど慧次郎の性格を考えるだにそれはありえないように思えてならない。
“慧ちゃん…”喉元まで出かかる甘い呼びかけを押さえ込みながら早希は慧次郎を受け止め続けた。
―妊娠したら…どうなるんだろう…。この子の子だということを隠さねばならないのか。この子の望みは憎む父に明かすことなのだろうか…―
早希は慧次郎の子を宿すことはもはや仕方が無いと覚悟していた。中絶するつもりなど毛頭なかった。
だがそうなれば当然早希の婚約は破談になる。氏家への執着はもともと薄かったが、父や会社への説明を考えると気が重い…。勘当もやむを得ないのだろう。
…早希はそんな先のことまで考えるようになっていた。
今日も慧次郎の作った朝食を食べながら特に会話もなくテレビを観る。ワイドショーの薄っぺらい話で重苦しい沈黙を慧次郎が意図して埋めているようだ。
山林に囲まれている為、朝は方々から遠く近く鳥のさえずりが響いてくる。最近は窓を開けられるほど暖かくなってきたので時おり吹いてくる風が心地よい。
目の前のテーブルには天然酵母で発酵させたイギリス食パンのトーストに新鮮な発酵バターの添えられた皿がのっている。発酵バターは早希が留学先のフランスで初めて味わい、その味と芳醇な香りに感激した思い出の食材でもある。脇に添えられた小皿には蜂蜜のかかった乳脂肪分の多い青カビのチーズ。これは早希がいつも好んでトーストに乗せて食べていたものだ。淹れたての珈琲は馴染みの銘柄、そして濃厚な生クリームの入ったガラスの小さなポット。刻みパセリのたっぷり入ったふわふわのチーズオムレツから湯気が立ち上る。しっかり水切りされた、シンプルなのに絶品のサラダには慧次郎が食べる直前に手製のフレンチドレッシングをかけてくれた。至れり尽くせり、とは正にこの事だ。
『本当に美味しい…。慧ちゃん、料理すっごく上手ね』慧次郎からの返答など無いのは承知の上で一方的に早希は話しかける。媚を売るつもりなどさらさらない。ただ、感じるまま語りかけた。
『ごちそうさま』にっこり早希が微笑むと、慧次郎は怒ったような困惑したような顔をした。
そして朝食後寝室に戻され、また早希は犯された。今朝の慧次郎の責め苦はいつになく激しい。その日、慧次郎は立ったまま早希の膝裏を掲げ、子供におしっこをさせるような恥ずかしい格好にして何度も慧次郎は早希の中を深く突いた。目の前に据えられた姿見に弟の長大な性器を咥え込んだあられもない自分が映っている―。
『姉さん…見ろよ。俺のが姉さんのをあんなに拡げてる』早希の性器は慧次郎の極太の性器を呑み込んで襞が伸びきっている。
お前を犯しているのは弟の俺だ―。それを殊更見せつけようとする露悪的な弟を、早希は鏡越しにやるせない思いで見つめた。
すると慧次郎は苛立つ面持ちで早希の膝裏を軸にしながら振り子のように姉を前後に揺すって何度も抽挿した。熱い先端に子宮を何度も突かれ、内部からつま先まで振動が伝わっていく。
『ああ…っあああっだめっ…あああああっ!!んんんん―――!!!』腹を突き出るような角度の強烈な摩擦に早希は叫び声を上げた。感じすぎて辛い。この時早希は生まれて初めて潮を噴いた。二人を映す目の前の姿見にしぶきが飛び散った。
慧次郎は思うさま早希の中に放つと、早希を寝かせ、そのまま無言で部屋を後にした。それを早希は少し寂しく思った。事後の気だるさを二人で睦みあいたい―。そんなことを早希は考えてしまっていた。