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異形の妻乞い
【近親相姦 官能小説】

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第3章-2 -1

慧次郎の部屋にはパソコンが数台デスクに並んでいて彼は日に何時間もそこに居続ける。おそらく株の売買でもしているのだろう。慧次郎は仕事中、早希の行動に一切注意を払わない。門の外にさえ出なければ何をしても許されるようだ、という事がわかると早希は広大な庭を探索するようになった。
穏やかな木漏れ日が芝生に差し込んでいる。あてがわれたスウェットの上下に慧次郎のカーディガンを羽織り、さく、さく、と裸足に草履でのんびり広い庭園を歩いてみる。
慧次郎の生活は実に不思議だ。外出は一切しない。生鮮食料品や折々の生活雑貨は全て村人が運んでくる。中には慧次郎しか知りえない早希の好物や下着さえも含まれているが、少なくともそちらは慧次郎自身が注文し、それらも併せて村人の住所に届くのだろう。つまりたとえネット上を当たっても慧次郎の自宅住所は分からないようになっているということだ。慧次郎は村をあげて守られているようだ。
そして毎日用意される食事は、味はもちろんの事、その組み合わせや食器類の色合いに至るまで早希を喜ばせている。
(あ…)
そこまで考えて早希は気がついた。そうなのだ。慧次郎は早希を犯す以外は早希の喜びそうなことしかしていない。

今日は屋敷の裏を歩いてみている。“裏庭”と言ってもその広さは優にサッカーが出来そうな広さで、燦々と陽の光が当たり“裏庭”から連想されるような暗さはない。見渡すとその角に大きな納屋があった。早希が恐る恐るそこを開くと、中は天井まで届く膨大な書庫になっていた。少し湿ったすえた匂いが鼻を突く。
数カ所に梯子が掛かっており、見れば国内外の名著がぎっしり揃えられている。
早希は屋敷に戻って慧次郎の居る部屋の襖の外から
『慧ちゃん…ちょっといい?』と声をかけた。
『…どうぞ』少し硬い声で返答がある。
早希はおずおず襖を開けて、
『あの…慧ちゃん、裏に納屋を見つけて…中を見ちゃったんだけど…。…本がいっぱいあるのね?』
『うん…。…姉さん読みたいの?』
『うん…だめかしら』
『いいよ。好きなだけ読めば。あとで部屋に座卓と座椅子を持って行く』
慧次郎の細やかな心遣いに胸が温かくなる。『ありがと。それだけ。じゃぁ…』そう言って早希が再び納屋に向かおうとすると、早希の背中に向かって
『今晩、何食べたい?姉さんの好物はだいたい用意してあるから…』モニターを向いたまま、慧次郎が訊いて来た。
慧次郎の申し出に『え…』と言葉が詰まってしまう。
『…と、そうだなぁ…お出汁で炊いた炊き込みご飯に銀餡の掛かったオムライスが食べたいかな…』早希がそう言うと、
『…わかった。じゃあオムライス中心に献立考えとく』慧次郎が静かに答える。
少しずつ慧次郎の声が柔らかくなっているのが感じられて早希にはそれがたまらなく嬉しい。
その後には苦しいほどの交接が待っているのだろうが、それでもこのやり取りは早希を浮き立たせた。
慧ちゃんはやっぱり昔どおりの慧ちゃんだ…。

早希は書庫から持ち帰った数冊の本を、読むとも無しに読みながら時おり昔のことに思い耽った。
手始めに持ち帰ったのは読まず嫌いのまま殆ど読んだことのない夏目漱石と中上健次だった。
中学の教科書で読んで描いていた夏目漱石の印象はコミカルだったりやたら熱い青春ものだったりしたのだが、たまたま手に取った彼の随筆は、硬質な品のよさを感じさせて好ましい。美しく繊細な日本語に感服する。
(これも慧ちゃんは読んだのかな…)
数ページ読んでは弟の事を考えてしまう。
進路を決める時、慧次郎は文学を希望していた。が、『行けるんだから最難関を受験しなさい』と、野心に満ち外聞ばかり気にする弦一郎にむりやり法学部を受けさせられた。
そうなのだ…つまり―。その時までは恐らく弦一郎は確かに慧次郎を会社に入れる決意だったはずだ。弟の希望を曲げてまで虚栄心を満たし、おのが野心を投影しておきながら何故父は突然弟と継母を追い出したのか―。
ここで慧次郎と過ごしてみて、そして昔のあれこれを思い出すにつけ、早希は弦一郎のエゴイズムに気付かされ、少しずつ父親に怒りさえ感じるようになっていた。


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