最終章 Tric or love-1
似衣奈と麻里奈に出会って一年、今年もハロウィンがやって来た。智洋に誘われ、初めは乗り気ではなかったが、まさか自分の人生をこれ程までに変えてしまう事になろうとは思ってもいなかった。
ハロウィンは昨年よりもまた一段と盛り上がっているように思えた。一年の中でも一番の仮装イベントはハロウィン。特にコスプレイベントが頻繁に行われているこの地域ではコスプレ人気が高く、駅前で行われるこのハロウィンイベントでは昨年以上にコスプレ大会の盛り上がりを見せていた。
「今年さぁ、私、コスプレ大賞獲りに行くから♪」
麻里奈がそう言った時、びっくりしたと同時に似衣奈を意識してるのかも知れないと感じた。智洋にハロウィンイベントでどちらかを選ばなきゃどちらに対しても失礼だと毎日のように言われていたせいかも知れない。はっきりとは言わないが、麻里奈は自分が似衣奈に気を惹かれている事に気付いているように思っていた。しかしハロウィンの日を迎えて思い出したのは、昨年のハロウィンイベントの終わりに、また来年会おうねっ、と言われた似衣奈の姿だった。あの日以来何度も似衣奈には会って来たが、ハロウィンイベントでの約束の再会は特別な気持ちになっているのであった。
朝、未央からLINEが来た。
『私、今日麻里奈と神崎さんが勝負するみたいだよ？貴之君をめぐって。お互いがどれだけ貴之君への気持ちを伝えらるか、コスプレで勝負するんだって。だから貴之君も気持ちをハッキリさせてね？どちらかを選ばなきゃ2人に失礼だからね？』
と。まー智洋がどちらかを選べと口を酸っぱくして言ってくるのはきっと未央が関係してるからだろうなと思ってはいたが、もはや未央や智洋に言われなくてもそのつもりだ。このまま中途半端な状態では2人に失礼だとちゃんと分かっていた。
「でも似衣奈さんにコスプレで勝つのは大変だろうなぁ…。」
似衣奈はニーナとしてもはやコスプレ界では名の知れた人気コスプレイヤーである。確かに麻里奈はコスプレが似合うし、その可愛さやセクシーさに何度も興奮させてくれた。しかしどうしてもセックスを盛り上げるためのコスプレという印象が強い。コスプレイヤーとして様々なイベントに参加し磨かれた似衣奈と、貴之を興奮させる為のみのコスプレしかしていない麻里奈…、圧倒的に不利に思えた。似衣奈には多くの者を魅了する術を知っている。その魅力に自分も夢中になったのだ。色んな意味で恋愛とはセックスだけが全てじゃないんだ…、貴之は今日このハロウィンイベントが終わった後、そう実感する事になるのであった。