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パワハラ上司 VS 新型うつ新人
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パワハラ上司 VS 新型うつ新人 2


「渡辺えぇ〜っ!!!!何じゃこりゃあぁ〜っ!!!?」
午後もまた主任の絶叫が事務所内に響き渡る。職場であれだけ大声で喚いたら逆に気分が良いだろうなぁ…と俺は思う。しかし、今度は本当に切羽詰まった悲鳴に似た叫び声であった。
「すいませぇ〜ん、主任〜」
それに対してのんびりとした口調で応じる男、渡辺。こいつはある意味、一番凄い奴だ。何せ高橋の姑息な工作もこの男には一切通じず、あの主任をも屈服させてしまう驚異の人物なのである。
「渡辺ぇ!!!!俺お前に発注頼んだよねぇ!!!?」
「はい〜、僕、注目しましたよぉ〜。ちゃぁ〜んと品物届きましたよねぇ〜?」
「届きましたよぉ!!!!いっぱい届きましたよぉ!!!!俺お前に頼んだの50個!!!!なのに届いたの500個!!!!何でぇ!!!?何でなのおぉーっ!!!?」
「すいませぇ〜ん、納品書に0一個多く書いちゃいましたぁ〜、えへへへへ〜」
「えへへへへぇ〜〜…0一個ぉ〜…一個違いで大間違いぃ〜♪…いひひひひひ」
主任は壊れたように笑った。そのまま発狂してくれれば最高なんだが…。渡辺、グッジョブ!俺は心の中で渡辺に喝采を送る。
「渡辺くぅ〜ん、俺はぁ〜、今までぇ〜、君のような素晴らしい男に出会った事が無いよぉ〜」
主任は笑いながら泣くという奇怪な表情を浮かべて渡辺に言った。
「えぇ〜?本当ですかぁ〜?嬉しいなぁ〜」
「皮肉だよバカヤロオォ――――ッ!!!!!」

俺は初め、田中君と同期の後輩である彼の事を軽度の知的障害者だと思っていた。障害の軽さゆえ、今まで福祉の網を上手くすり抜けて生きて来て、間違って我が社に入社してしまったのだろうと…。しかし話を聞いてみると彼、何と国立大学を卒業しており、しかも入社時の筆記試験の成績が我が社の創業以来ダントツのトップだという。知能指数は高いのだ。なのに明らかにおかしい。“天然”というレベルでは済まされないほど“抜けている”のだ。

「発達障害じゃないですかねえ?渡辺さん…」
俺の疑問に田中君が答えてくれた。
「何それ?」
「まさに渡辺さんみたいな人です。知能は健常者並みかそれ以上なんだけど…その…どこか足りないというか…抜けているというか…まあ不思議な人達ですよ」
「ふ〜ん…」
俺は妙に納得した。最近は“統合失調症”とか“適応障害”とか、何でもかんでも病気や障害にするのが流行りらしいから、渡辺のような奴らにも新しく名前が付いたんだろう。

とにかくそんなユニークな面々が集うのが我らが職場、営業三課である。
あまりに個性的(すぎる)メンバーに俺も時々『まさか“ショ○ニ”よろしく厄介者の島流し部署なのではあるまいか…』と思わず考えてしまう事が少なからずある。

そして季節は巡り、四月。
“彼”はやって来た。
全てを変える事となる…いや“変える”なんて生易しい物じゃない。
全てを狂わせ、ぶち壊す事となる“彼”が…。


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