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手紙
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手紙 1


それは手紙だった。
味気無い真っ白な便箋に、手書きのボールペンの文字。
その文字からは性別を感じとる事は出来なくて、ただの綺麗な文字。印刷物みたい。
内容はありきたりで、「この手紙を読んだ貴方には不幸が訪れます。」というもの。
この手紙が届いた人は、死んでしまう。
例外も回避する方法もありはしない。
自分の死までの期間も解らない。
―これは噂だ。都市伝説というやつ。本当かどうかも解らない。
でも、テレビや新聞でとりあげられる自殺や事故や事件で亡くなった人達の中で一部の人達の遺留品に、差出人不明の手紙があったという事実。

「…なんか、ありきたりな話だね…」
生徒達が帰り、閑散とした放課後の教室で智子は言った。
目の前にいる友人の麻美から、大事な話があると言われて聞いたのが、この話だった。
「その話って流行ってるみたいだけど昔から似たようなのあるよね〜。」
大事な話という内容では無かったので、智子は適当に返答した。

「…あの…さ……あの…」
うつむきながら暗い表情で麻美は呟いた。
「…手紙…来たの…私宛に…」
麻美の泣きそうな表情から、それが冗談では無い事は、すぐに分かった。

「この前ね…学校帰る時に、下駄箱に入ってたの…気持ち悪くて、その場で捨てたんだけど…」
麻美は涙を浮かべ震えながら続けた。
「帰ったら…家の前に…落ちてたの…」

ついに麻美は泣き出してしまった。
智子は麻美を慰めながら困惑していた。
テレビなどで流されている嘘臭い都市伝説に親友が被害にあっている。
だが本当なのだろうか?
麻美は美しい。
智子も可愛らしい方だが、麻美のそれは群を抜いていた。同じ中学生で、これ程の差がでるのかと思ってしまうぐらいだ。
それゆえに、変な輩に目をつけられる事も多い。
イヤらしい感情で近付く者や、妬みを持つ者もいる。
手紙の事も、嫌がらせなのではないだろうか?
智子は冷静に麻美を落ち着かせてから言った。
「その手紙、見せてくれる?」
麻美は頷き、震える手でゆっくりと鞄の中から手紙を取り出した。

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