BRAIN KING 2
*
部屋には5つの机が置かれている。
前から2列に並んでいて
前の列には3つ
後ろの列には2つの机がある。
その中の前例中央の机だけが
空いていた。
ふいに
一番左前の席に座っていた、40〜50代と見られるおばさんが口を開いた。
「あなた…北村巧さん…?」
そのおばさんは僕の名前を呼んだ。
見覚えの無い顔だけど、どこかで会ったことがあるのだろうか…?
いや…その前にここはどこなんだ?
たくさんの疑問が僕の頭の中をぐるぐると巡り
結局、疑問は言葉にならなかった。
「あの……えっと…」
*
いま僕に向かって言葉を発したのは
おばさんだが
前例右には
おれと同じ年頃、高校生ぐらいの女の子が座っている。
後ろの2列には
左側に小学校6年か中1か、そのぐらいの年齢の少年と
右側にはさらに幼い、小学校低学年ほどの少年が座っていた。
先ほどの
おれの言葉にならなかった発言に対して
おばさんはおれの心を見透かしたかのように、こう答えた
「ここがどこかは私たちの中の、誰にもわからないの…。」
*
さらに続けて言う
「ここにいる私たち全員、気づいたら、ここにいて…というか、来るつもりはなかったのに…足が勝手に動いてというか…。ぁ、あなたの名前は、この机についてる名札に書いてあったの…。」
そう言っておばさんは前例真ん中、つまり唯一誰も座っていない机を指差した。
なるほど、確かに僕の名前の書かれた紙切れが、机の上に貼られている。
「僕は…学校の帰り、いつもと同じように電車に乗っていたら、ここに着いちゃって…。」
とりあえず、僕もここに着いたのは自分の意志ではないことを伝えた。
*
おばさんが言う。
「最初にこの部屋に来たのはわたしなんだけど、もう30分ぐらい経ってて……ぁ、この部屋、一度入ったら、出られないから…。」
…え!?
僕は扉のほうを振り返ったが、そこにはもう扉は無く
白い壁があるだけだった。
「えっ…なんでっ……」
「だから、誰にもわからないの…。」
全員が、扉の会った壁をにらむ。
部屋の空気が重苦しい。
自分たちがどこにいるかもわからない。
気がつけばここにいた。
そして
いつまでここにいなければならないのかも
誰にもわからない。
*
その重苦しい空気を払うように
「……そうだ、自己紹介、しない?」
と、おばさんが提案した。
その場の全員が、お互いに顔を見合わせる。
悪くないと思う。
再び何にもない(机といす以外)空間に迷いこみ
することもなにもない。
自己紹介も、いいかもな。
そう思っていると
右前の席の女の子が
「…それも、いいかもしれませんね。やりましょう♪」
笑顔で言った。
正直、かわいい…。
そして、みんながそれにうなずいた。
こうして、自己紹介をしていくことになった。