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ARMORED WESTERN
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ARMORED WESTERN 2

町の酒場に男が入ってきた。酒場は人が集まりやすく、情報のるつぼのような場所だが、この酒場は昼間とはいえ客は五人程度しかいなかった。
「…いらっしゃい」
カウンターに立っているマスターらしき人が男にそう言った。何故か声が弱々しく聞こえた。他の客は男を鋭い眼で見ている。

「…ご注文は」
「酒も食事もいらない。聞きたいことがある」
主人はあからさまに嫌な顔をした。
「ここは酒場だ。…他をあたってくれ」
「そう言うな。簡単なことだよ」
スミスは愛想のよい笑みを浮かべながら、こう言った。
「この町のシェリフのイニシャルはA・Jか?」

いくつかのテーブルに散っていたはずの五人の男が、示し合わせたように同じタイミングで立ち上がった。
『…単刀直入すぎはしないか』
電子音声が、あきれたようなニュアンスで言った。突然響いた姿のない声に、店主が目を剥く。
「言っただろう。時間がない」
スミスは静かにそう答えた。
カウンターに背を向け、店内を見渡す。
五人の客の五つの銃口がスミスの方を向いていた。
誰何も警告も脅迫もなく、カチリと撃鉄の起きる音が響く。一瞬のちに、男たちの指は引き金を引き絞った。

「ニフ」
返事の代わりに、ピ、と電子音が短く鳴った。

自然言語インターフェースを備えた物理演算エンジン、通称『ニフ』。それが電子音声の正体だ。
彼の胸にロザリオ型のスピーカーがかかっており、音声はそこから出る。
しかし機械本体はスミスの頭蓋の内側にあり、彼の視覚と直接接続されている。

ごく自然に会話が成り立つが、完全人工知能とは違った。
言語の範囲をごく限定的にプログラムされており、自律思考はしていない。

予測着弾ポイント・弾頭到達時間・被弾時損害予想・コッキング動作所用時間から予測される次弾発射時間…スミスの視界を演算数列が埋め尽くす。
一秒の数百分の一の間に、次の選択肢が表示された。
回避行動・迎撃行動・その両方、三種に分岐したバリエーションの動作ガイド。そしてそれぞれの成功率が。

彼は迷わなかった。

外見上はコルトだかレミントン辺り、黒色火薬を発射薬に用いる、シングルアクション操作のリボルバー…一般には『シックスシューター』学の足りぬ者には『親指や左手でガチャガチャしながら撃つ奴』という説明がつくデザイン。

鉄より硬いプラスチック…高分子樹脂フレーム。
液体火薬と撃ち空の出ないカーボン薬夾が音速の二倍以上で弾丸を叩き出す。

高速炸裂徹甲弾が5人分30発、スミスを挽肉と屑鉄のミックスに変えんと迫る。

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