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無頼エスパー・シヴァ
その他リレー小説 - SF

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無頼エスパー・シヴァ 1

 そこは銀河の辺境、惑星バイラス。
 銀河連合の中心からも、かの悪名高きアジャンタ帝国の王都星からも遠く離れたMクラスの惑星。
 百年前はレアメタル採掘に賑わったこの星も、鉱物資源を掘り尽くした後はテラフォーミングも放棄され、今は草木も生えぬ荒野が大半を占めるばかりである。
 そこに住む者と言えば取り残された老人か、未だ発見されていない鉱脈を探す山師か、或いはお尋ね者か。
 そんな見捨てられた星のとある宿場町に、一人の風来坊が訪れた。
 肩に乗せたバイラスのイワネズミはこの男のペットなのか、くたびれたマントを纏った男はまるで言葉が通じるかのようにネズミに語りかけた。
「はいはい、分かってるよ。腹が減っているのはお前さんだけじゃないんだ。俺も今にもぶっ倒れそうなんだから、耳元でそう甲高い声を立てるなよ」
 そう言うと男は、飯が喰えそうな店はないかと町をぐるりと見回した。
 目に入ったのは軒下に吊された木の看板。酒場と宿屋が一緒になったような店で風に揺られる看板には“縞猫亭”と書かれ、ニヤニヤ笑いの猫が彫られている。
 少しいかがわしそうな店だが、この星の店はどこも似たようなものだ。
 男は気にする事もなく店の扉をくぐった。
 中は薄暗く、埃と紫煙の混じり合った澱んだ空気の中でいかめしい男たちが酒を飲んだりカード遊びに興じている。
 図体のでかい余所者が店に入ってきても、一瞥をくれるだけで大した興味を示さない。
 肩にネズミを乗せた風来坊は慣れた様子でカウンターに座り、老齢の店主に金貨を数枚取り出して見せた。
「マスター、ビールとチリビーンズ、それと何か肉をくれ」
 風来坊の名はシヴァ。62年前の銀河大戦では勇名を馳せた強力なサイキックソルジャーである。軍属ではなかったが連合と帝国の旗艦を13隻沈め、連合の自動惑星バラージを壊滅させた張本人であり、その為連合と帝国のどちらからも追われる凶状持ちになっている。出生も容姿も謎に包まれていたが、金銀のヘテロクロミア、左右で瞳の色が違うと言う事だけは知られていた。
 店主は無言で金貨をチェッカーに放り込んだ。貨幣の成分を分光分析し、査定額を算出する機械だ。途端にチェッカーのガイガーカウンターが狂ったように泣き喚き、間髪をいれずに店主が警報を切った。等級はF-のバイラス金貨だ。放射性金属を大量に含むそれは、星系外では鉄くず並の価値しかない。チェッカーに表示された評価額は、27スター。注文した品に見合う金額だった。
「ぶへっ!何だよこれは!ミネラルフリーじゃ無いのかよ!」
 チリビーンズを一口食べたシヴァが、豆を吐き出して怒鳴った。重金属特有のエグ味を感じたのだ。

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