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無頼エスパー・シヴァ
その他リレー小説 - SF

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無頼エスパー・シヴァ 2

「逆浸透膜カートリッジが壊れていてな。Cレーションが、30スターだ」
 店主が軍用の携行食を取り出した。カロリー補給には最適だが、味は最悪だ。
「横流し品が30ってボッタクリじゃないか。…仕方ない、肉はキャンセルして、レーションをくれ」
 追加の金貨をカウンターにおいて、携行食を受け取る。
「肉じゃないと嫌って、贅沢言うなよ。俺がウラン入りの豆を食ったら死ぬっての」
 イワネズミと口論を始めた男を見て、店主は首を振ってグラス磨きに戻った。テレパスなのか、ただの狂人なのか。どちらにせよ避けるべきだ。
 やがて、一人漫才を続けていたシヴァは諦めたようにかぶりを振り、懐から更なる金貨を取り出した。
 金貨の音に気が付いた店主は横目でその枚数を確認し、無言でキャッシャーに放り込むと生肉を皿に載せてイワネズミの前に置いた。バイラス産の食用蛙で、人間はそのまま食す事はできないが、イワネズミを主としてバイラスの生物は体内に還元バクテリアを持っているので平気だ。
 嬉々として肉を頬張るイワネズミを羨ましそうに眺めながら、シヴァは頬杖を付きながら不味いレーションを噛み砕く。
 食事としてはあまり上等とは言えないが、空腹が最良のスパイスとなって不味いレーションも何とか食えた。
 そして空腹が癒されてくると気分も不思議と落ち着いてくる。
 イワネズミも既に皿の肉を平らげ、満足そうに毛繕いしており、そろそろ部屋でも頼んで休もうかとシヴァは立ち上がる。
 その時、背後で若い女性の怒声が響き、シヴァも含め、店内の客全てが思わず振り返った。
 そこには、数人のならず者とテーブル越しに対峙する若い女の姿があった。
 濃い藍色の瞳でならず者を見据える女。
 相手は4人。中心に座っているリーダー格の男はサイボーグ手術を受けている。油圧シリンダー剥き出しのごついアームは医療用の義体とはほど遠い違法改造品である。
 他の男達も多かれ少なかれ傷と金属部品で体をデコレートしており、まともな職業の男達でない事は明らかだ。
 しかし、女はまるで物怖じする事無くテーブルを叩いて相手に怒りを向ける。
「手伝ってくれる気がないのなら他を当たるわ」
 そう言って立ち上がる女。しかし男達もそそくさと立ち上がり、下卑た笑いを浮かべながら女の行く手に立ち塞がった。
「なあ、姉ちゃん、そんなに怒るなよ」
 サイボーグ男が勿体を付けて言う。
「この星は資源を掘り尽くした時に死んじまったんだ。俺達は見捨てられたんだ。その良い例があんたじゃないか。政府はどうして化け物共を放置しておく?俺達が自分でこの星を出て行くよう、し向けてるんだ。何の保証もしなくていいからな」
 男はそう言って自分の手をかざしてみせる。
「どのみち、この星の環境に合わせて生体調整を受けた入植者は地べた這いずり回って生きるしかねえけどよ」

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