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侍と龍と魔法
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侍と龍と魔法 2

まだ童だった頃の遠き記憶をふと思い出した。使者と随伴者らが持つ集団に消える客人とその弟子を見て村長は思う。



戦乱時代末期に徳河家が十代臣家の命により新たな都を開いた、それが東都である。十代臣家が治める筈だったが徳河家の暗躍により中央京により逆族にされ天下分け目の大合戦にもつれ込んだ。徳河家が勝利し新たなる統治機構の最高責任者として君臨している。だがこの地は同時に龍が棲む場所であった。
それ故に“十代臣家は龍が子を呪った“やら“徳河家は龍との密約がある”と言う世迷言も産れるのである……東都やその周辺の村々に龍や人に生らざる者の被害が他の地域に比べても多いのも事実だ。
「既に主だった鬼斬り役は世代交代している上に火付盗賊改方には長谷川兵三が呼び戻された」
「“本所の鉄三郎“殿が……」
「将軍様たっての希望でな、矢十郎の子を探し出さぬなら自ら動くと言い出して側役人らも慌てて老中を呼び出した……後は昵懇の仲であった俺が直々に将軍様からの命を受ける羽目になって……」
使者である彼はその顛末を見ていたのか遠い目になる。
「なあ、清十郎……独眼龍を倒してもそのまま役目を続けないか?」
「……」
「無論幕臣らも過度な責任追及をするのは控えるだろう……独眼龍により妻子が喰われた幕臣も居る」
「!」
それが事実なら魑魅魍魎が跋扈する前触れと言っても過言ではない。中央京奉行役をしていた長谷川 兵三を火付盗賊改方に再任させたのは長谷川家は徳河家に付く数少ない鬼斬り役の一族、最も兵三は出生上当初から武家で育ったわけでもなく母親の実家である豪農の一家で育ち客人に鬼斬り役の侍が居たので剣の腕前を磨いた。しかし長谷川家に多大な不幸が重なり後継者が兵三しかおらずに仕方なく長谷川家は彼を迎え入れた。荒っぽいがそれなりに礼儀もあって武家社会に身を置きながらも庶民の視線を持っていた事もあり、本所で日中居た事から渾名がついた。やがて父親の引退に伴い彼も順次幕府の役職をこなし、途中で幾度か龍を倒した事もある。その姿はまさに鬼神の如く……火付盗賊改方長官に抜擢された以降は数々の盗賊を捕らえる。ただ兵三は彼らの心情を察してか無暗に死刑にする事も無く遠島にする事が多く、中には狗として働いている元盗賊も少なくない。


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