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侍と龍と魔法
その他リレー小説 - ファンタジー

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侍と龍と魔法 1

日本とよく似た何処か。
龍と呼ばる猛獣を始め、さまざまな猛獣が人々の生活を脅かしていた
これはそんな猛獣を狩り己の技と力のみで生活する猛者の物語である
「せい!」
空気を震わせるほどの雄叫びと共に鍛え抜かれた腕に握り込んだ刀を振り下ろす
目の前にあった大木は真っ二つになった
齢五十年の樹木を倒すのは樵でも半日作業……それを葉に滴る水滴が地面に落ちるのと同じ位に縦に真っ二つにした男は侍としては驚異的な能力である。だが龍を初めとする怪獣を倒す事を生業にする怪獣斬り師としては基本のキである……。
「師匠……都から使いが来てます」
「追い返せ」
「……水臭い事を申すな、清十郎」
如何にも弟子と言う感の少年が困った顔を見て使者が言う。
「……」
「都にて龍が暴れておる」
「鬼斬り役に任せておけばよかろう」
「その鬼斬り役でも手におえん、火付盗賊改方もな」
大木を真っ二つにした男は初めて振り向く。

この国を治めているのは中央京にある御所に住む国帝と呼ばれるお方であるが実際には東都にて将軍以下幕臣らが仕切っている。今真っ二つにした大樹が手のひらに収まる程の種だった頃、大名ら二つの勢力に分かれて大合戦した……結果は今の将軍職を務める徳河家陣営が勝利し、破れた十代臣家はその後の反乱で討伐された。清十郎の実家はその時に没落するも並外れた刀術により一族の多くは各大名や東都幕府に鬼斬り役で細々と暮らしていたのである。鬼斬り役とは龍を初めとする怪獣若しくは鬼を初めとする怪人を切り捨てするお役目であり十代臣家に仕えていた者や大名で獲り潰された者達の多くが仕えた。しかし命を落とす事が多い役職であるが少しの不祥事で自害に追い込まれる事が多く清十郎の父も自害された。故に清十郎は都を後にしてこの山にこもっていたのである。
「独眼龍か?」
「いかにも、既にかみ殺された者は二十名……隊長をこれ以上自害させると戦乱の世に戻る」
余りにも理不尽が罷り通るお役目であるが故に徳河家を恨んでいる侍も多いがむやみに戦乱に戻すと国帝様に刃を向けるのと同じである。それ故に清十郎の様に人里離れた山中に籠る侍も増加した。
「あの一件は幕臣の横やりが齎した事が明白、なのに矢十郎殿に責任を押し付けた事は将軍様も気を揉んでいた……独眼龍と来ればお主は動く」
「引き受けた」
清十郎は弟子である伊三郎と共に旅支度をする。


翌日、使者と共に山を下りて麓の村に寄る。世話役の村長宅にて預けてあった手形と馬を引き取る為で村長もまた祖先が十代臣家に仕えた足軽大将であった事から都から来た清十郎を受け入れていた。
「清十郎殿が都に……」
「因縁の相手が跋扈してましてな……」
村長を務める翁は訝しげになる。
徳河家の為にもなる龍退治なぞ止めてしまえと言いたいが国帝様の頭上を脅かす存在である事も変わりは無い。独眼流の事は数年前、旅人が貰ったかわら板で知ったが恐ろしい存在だ。男を胃袋に入れ女子供を浚うと記載されているが真偽は定かではない。
「村長、世話になった」
「ご無事を」
火付け石を鳴らした村長はキリっとした。こうして足軽大将の祖父を送り出したもんだ。

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