トリップ・ドリップ・ストリップ!? 2
なんとか大木の陰に辿り着いた。
遠目に見ていたよりも太くて立派な木だ。多少の事では折れたりしないだろう。僕はその木を背に座り込む。体勢はもちろん体育座り。
周りの状況から目を逸らすように、顔をうずめた。
僕は、これからどうなるんだろう。誰かに見つかって殺されるか、行く宛もなくさまよって野垂れ死ぬか。
いっそのこと、誰かに助けを求めるとか?
戦場に迷い込むなんて、明らかに怪しすぎる。今戦っている、恐らく2つの勢力のうち、どちらに出向いても確実に疑われる。スパイなんじゃないかと。
大体、身分を証明できる物を持っていない。思い出したくないけど、あの生首は明らかに西洋系の顔だった。しかも金髪。つまり此処は日本じゃない。
もっと言うと、この時代に剣やら斧やらで弓やらで戦ってる所なんてある訳ないし、何よりあの人型ロボが異質すぎる。他を最大限譲歩してもだ。
つまり、考えたくはないけれど――
「もしかして、異世界?」
声に出してみるとなんともシュールだった。
異世界ねぇ。これはアレ? なんやかんやで世界を救っちゃう、勇者的なフラグって奴なのかな?
まず、現在の装備を確認してみよう。
・武器 なし
・防具 着古したスウェット上下
・装飾 くるぶしまでの靴下
この通り何も持ってません。胸ポケットにくるんだティッシュが入ってたけど。では能力。
・体力 平均よりかは上
・筋力 人並み
・知能 学業成績は結構良い感じ
・素早さ 逃げ足には定評あり
・特技 漢検2級 珠算2級 暗算2段
ざっとこんなものかな。
うん、見事に何もない。特に目立った能力もなければ、この先生きていける自信もない。
誰か、希望を下さい。
体育座りでいじいじしていたら、いつの間にか陽が傾きかけていた。背後から戦いの気配は感じとれない。もう終わったようだ。
「もう、大丈夫かな?」
僕は立ち上がり、恐る恐る大木の影から大量の血が流れたであろう先を見る。
重なる屍。突き刺さった剣。持ち主を失った戦斧。もう人型ロボも、生きている人間も居なかった。
「――――?」
すっ、と僕の肩に手が置かれた。視線だけ移すと、煌びやかな装飾の篭手。
「――?」
見つかった。ヤバいヤバい、やばやば。何言ってんのか分かんない。
そーっと、相手を刺激しないように振り返る。
「わ、美人……」
「?」
多分、どこぞの騎士様。白い甲冑に金色の植物を象った装飾。左の篭手には小振りの円盾、右腰には鞘に収まった直剣。
西洋系をベースに中東系を混ぜたような、気品漂う凛とした顔つき。さらには肩まで伸びた紅蓮の髪。
「――?」
「……はい?」
「――、―――!」
「え、ちょっと!?」
いきなり腰の剣を抜き、僕の首元に切っ先を突き付けてきた。
え、何これ? 僕死ぬの?
「――! ――!?」